日本農業新聞連載「SAWACHI データ駆動型農業の夜明け」の取材②

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日本農業新聞の四国支局の企画により2023年2月から日本農業新聞の中四国版に計4回に渡り、IoPプロジェクトについて記事が連載されました。本記事は、土佐くろしお農業協同組合様への取材をまとめたものです。

IoPプロジェクトのSAWACHIに先行して環境データや出荷データを積極的に集約・分析し、現場において農家さんへアドバイスを行ってきた土佐くろしお農業協同組合。データを活用し運用している独自のシステム「あゆみ」のデータ利用や農家さんの反応、今後の展望について伺った取材内容です。

土佐くろしお農協の独自システム「あゆみ」の特徴について教えてくだい。

SAWACHIをスタートする前から、収量データは農家ごとにとっていて、グラフ化して篤農家のデータをできるだけ利用しようと考えて進めていました。農家の感覚と実際測定したデータがズレるため、データを時系列で連続的に欲しくなり、メーカーに協力してもらって測定器を開発し、BIツールのシステム「あゆみ」を作りました。以前は、農家を訪ねてデータをもらい、グラフ作成や比較など分析をして、フィードバックに時間をかけていました。平均、合計、並べ替えをして渡していましたが、農家さんにお返しするまで1週間程度必要になっていました。

データの数が集まると、収量が少ない人の特徴的な部分が見えてきます。予想より収量が上がらない、落としてはダメという時に収量が落ちている部分が分かります。ミョウガは、年間収量の平均トン数が5.5トンで、毎年安定して6トン、7トン穫る人が何十人もいます。2トン3トンしか穫れない方に誰のデータを参考にしてもらうか、成功事例は、沢山あるが正解は1つじゃない。結果が一番大事です。その人に対して誰のデータがハウス環境やつくり方が、一番向いているのかを営農指導課で協議して普及させることがポイントです。

現場で、「あゆみ」をどのように確認されているんですか。

篤農家さんのデータを活用させてもらっています。別の農家から「もうちょっと穫りたい」という話があれば、篤農データを見せて「このようにやっている人を参考にしませんか?」と話して、納得された方は「1回やってみようか」となります。「夜の温度も同じなのになぜ穫れないのか?日中温度が低いといってもそこそこある」と相談をもらって、「しかし積算温度を比べると、あなたのところは、1ヵ月でこれくらい違うよ」という示し方もできる。実際きゅうりで分析したデータを見たら、30トンの方と15トンの方では積算温度のデータが、全然違う形になった事例もありました。

データがあることで、指導に説得力を持たせやすくなりましたか?

後継者の方に自分たち(親・師匠)のやっていることを数字で伝えられます。今は俺の背中を見て育てという時代ではないので、「今日、水かけて」とか「温度を上げて」と言われても、教わる側としては理由が欲しい。理由がわかって作業するから、後継者が育ちます。測定器でデータを取ることが当たり前というのがこれからの形です。

現場には、その場でデータを見られるタブレットがあり、生育調査をしておかしいなと感じたら、その時点で温度や天窓の設定などを確認できます。以前は、1回行ってデータをとってきて確認していたので、対応が可能なタイミングを逃してしまうこともありました。これまでは作物でしか判断することが出来なかったので、農家さんの言うことを信じるしかなかった。データを見たら原因が分かるので、指導自体は以前より簡単になりました。若い指導員が一番メリットを感じていると思います。

フィードバックの頻度と活用方法について教えてください。

農家さんは、分析結果を1回見始めると、さらに見たくなってきます。1月ごとに1回とか、要望のある方には短いスパンで渡しています。極端に去年と数値が変わっている人には、去年のデータと一緒に渡して、全然違うことしてない?と聞いたりしています。

紙では月や週の平均データや、それを月ごとに比較したものなどを提供しています。結果が悪いときなどはコメントを付けたりもします。

農家さん自身が今まで思っていたことと全然違う数字が出ているし、勘でやっていたことは教えにくいかもしれませんが、数字であれば自分たちが聞かれてもすぐ答えられるので、具体的な対応が出来ます。

現場で欲しい設備やこれから考えられている施策はありますか?

見守り的な部分と生育状況を確認出来るカメラがあるといいですね。現場がすぐ近くならすぐ行けるのですが、結構遠いところのデータを見たい時などはカメラがあると楽です。

また、測定器がどんどん普及して、県内の他の地域からもどんどんデータが集まってきたら、今年から挑戦しますが、総合環境コントローラーを入れていきます。地域の篤農家さんのデータを参考にして、完全自動ではありませんが、ある程度最初から半自動くらいで色々な制御が可能です。今後は、農業者が減り1経営体が運営する面積やハウス数が多くなります。それに対応するには自動化が重要です。より繊細な状況判断ができる環境制御をメーカーと協力して開発しています。

データ駆動型農業のトップランナーである土佐くろしお農業協同組合様の、今後の取り組みの発展がとても楽しみです。