データ駆動型農業を実現するIoPクラウド

「IoPクラウド」とは、IoT(Internet of Things)で接続した農業ハウス内の機器のデータや、高知県全体にわたる農産物の個々の出荷に関するデータなどを、リアルタイムで一元的に集約するクラウド型のデータベースシステムのことです。例えば、生産現場である農業ハウス内の温度、湿度、CO2濃度、カメラ画像、機器の稼働状況などのデータのほか、JA高知県が持つ日々の農産物の出荷量や、等階級などのデータが、リアルタイムでアップロードされ、お互いに関連づけられるとともに、時系列に整理されて、データベースに集約されます。

この取組には、東京大学情報学環越塚研究室、九州大学、デジタルハリウッド大学および農研機構等の大学や研究機関、並びに株式会社NTTドコモ、富士通株式会社および四国電力株式会社をはじめとした企業から、すでに様々な形での参画をいただいております。

「IoPクラウド」は、生産者が直接その機能を利用するだけでなく、

  • ・高知県やJA高知県による、データの分析に基づいた詳細で即時性の高い栽培指導
  • ・大学等研究機関による、植物体の生理に基づいた生育予測などの研究の実証と実装
  • ・民間企業による、より優れた機能を備えた(スマートな)農業用機器やソフトの開発

など、産学官連携で多方面から生産活動を支援する仕組みの核になります。

生産活動を支援する仕組

IoPクラウドのデータ収集について

全農家からの出荷データを毎日自動的に一元化収集しており、データを農家・JA等が販売戦略・栽培指導や技術普及に活用したり、大学等研究機関が生育予測などの研究に活用しています。

 

県内農家の出荷データを集約

主要6品目約3,000戸の出荷データを一元化収集
出荷データを毎日自動収集

出荷データを毎日自動収集

毎日の等階級別出荷量・品質の情報や、出荷時期・量の予測などを通し、栽培改善・販売戦略の最適化に活用します。

農家、JA等がいつでも活用

農家、JA等がいつでも活用

高知県や JAによる、データの分析に基づいた詳細で即時性の高い栽培指導や技術の普及に活用します。

様々な研究者がデータを活用

様々な研究者がデータを活用

大学等研究機関による、植物体の生理に基づいた生育予測などの研究の実証と実装に活用します。

個々の農家の様々なデータを収集

生産者基本カルテ

生産者基本カルテ

環境データ

環境データ

作物生育データ

作物生育データ

栽培管理履歴

栽培管理履歴

機器類の稼働状況データ・エネルギー経費

機器類の稼働状況データ
・エネルギー経費

病害虫発生のデータ

病害虫発生のデータ

営農、労務、経営情報データ

営農、労務、
経営情報データ

IoPクラウドを活用したデータ駆動型農業へ

2025年を目標に、すべてのハウスがIoPクラウドと連携することを目指します。農業者自らがパソコンやスマホからのアクセスできる仕組みをつくり、データ取得が苦手な農業者には、自動的に必要な情報を提供。また、新規就農者や課題解決が必要な農業者には、高知県の普及指導員や、JAの営農指導員によるサポートを実施していきます。

農業者が必要な有益な情報を自由に活用

環境/収量・経費の見える化

  • ・圃場環境、作物の状態、収量・品質、毎日の経費、出荷量・時期の予測等をスマートフォンやパソコンで「いつでも」「どこでも」把握可能

監視と警報

  • ・ハウスの温度異常や、機械のトラブルを警報メールで知らせてリスク回避可能なインフラを整備

コミニケーションインフラ

  • ・栽培情報共有、営農日誌などの情報共有コミュニケーションを容易にすること  
  • ・プッシュ型での個別有益情報の定期配信サービス
  • ・グループウェア機能

遠隔制御/自動化・省力化

  • ・ビジュアル遠隔制御画面で、遠隔からハウスの中を操作可能とすること
  • ・温湿度管理、水・肥培管理、病害虫診断等の自動化
  • ・データに基づく自動制御

販路拡大

  • ・作物の状態や生産履歴、GAP点検項目、機能性成分等をスマートフォンやパソコンで「いつでも」「どこでも」確認、トレースできる
  • ・マーケットインで受発注取引可能にすること

データ駆動型農業の推進体制・役割

農業イノベーション推進課

農業イノベーション推進課では、園芸農業、次世代型園芸システム、農業クラスター、IoPクラウドに加え、データ駆動型農業を推進しています。データ駆動型農業推進担当は、園芸の専門技術員が担当しています。

農業振興センター農業改良普及課・農業改良普及所

高知県内には9つの普及課・所があり、職員数は約150名、各所属の職員の平均数は約15名となっています。
各普及課・所ごとに1名ずつデータ駆動型農業推進担当がおり、その担当者は日々データ分析に関する学習、分析技術や結果の共有、農家の方へのフィードバックを行っております。

農業技術センター

SAWACHIに集積されたビッグデータから、品目別データ解析・各データの関連性の分析等を行っています。

これら全体の企画・取りまとめを担当する農業イノベーション推進課と、実際の現場でデータを活用しながら生産者に営農指導する普及課・所と、データを深く分析し新たな価値を発見する農業技術センターが一体となり、データ駆動型農業を進めております。

データ駆動型の営農指導

BIツールの活用

SAWACHIとBIツールにより、データを多種多様に可視化し、高度なデータ分析を行うことができます。分析結果を生産現場にフィードバックし、営農改善へつなげます。

指導員のスキルアップ

高知県の普及指導員・JA高知県の営農指導員は、さまざまなアドバイザーによるデータ活用・分析のための研修を受講し、データ駆動型の営農指導に必要なスキルを磨いております。

  • 農家の方へ
    IoPクラウドを活用したデータ駆動型農業へアップデートすることにより、ハウス内の環境データや栽培状況・出荷データを見える化し、効率化を進めています。また、データを用いた改善案の立案・指導サービスを提供し、IoPクラウドを利用する生産者の皆さまを支えていきます。
  • 企業の方へ
    IoPクラウドによりリアルタイムで収集されているデータの全てが、新しいビジネスに繋がっていきます。現在、施設園芸の現場で利用するIoPクラウドを活用した新たな機器・システムや、アプリケーション・サービス等の開発を、企業の皆さまと進めています。
  • IoP研究
    IoPクラウドで蓄積したデータを新しい技術や機器、サービス等につなげていくためには、日々の研究活動が欠かせません。研究者の方々にはそういった研究を円滑に行っていただくための環境をご提供いたします。