高知県主要野菜の豆知識
なすなす
(ナス科ナス属)
- 生物種の英名
- Eggplant
[Syn. Aubergine]
- 学名
- Solanum melongena
- 原産地
- インド
なすの美味しい時期は秋とされていますが、ハウスで栽培されていることもあり、今では1年を通して手に入ります。なすの産地である高知県では、冬、春に収穫したなすが多く出荷されています。なすには多くの品種がありますが、高知県で最も生産されている品種は「竜馬」、その他の品種としては、高知県で品種改良された「土佐鷹」や「慎太郎」、大ぶりで濃厚な味の米ナス、小ぶりで形のかわいい小ナスなどがあります。
不溶性の食物繊維が豊富
5大栄養素としての特徴はあまりありませんが、なすは不溶性の食物繊維が豊富な野菜です。
トピック
なすは日本人にとって古くからなじみのある野菜です。奈良時代から日本でなすが栽培されていたことが、奈良時代の書物「東大寺正倉院文書」からうかがえます。
二次機能美味しさ
なすの注目部分
「光沢のある紫黒色の色どり」
「スポンジ状の柔らかい果肉の風味」
「独特の渋み」
「ほのかな甘み」
新鮮ななすの見分け方
新鮮ななすは光沢とハリがあり、重量感があります。
また、がくの部分が尖っているものが新鮮です。
なすの渋み
渋みの原因
なすには渋味がありますが、その原因としてはクロロゲン酸という物質が関わっています。クロロゲン酸はなすに含まれるポリフェノールであり、カフェ酸とキナ酸から構成されています。カフェ酸はなす独特の舌を収れんさせるような渋味に関与しています
- 黒澤祝子 (1986) ナスの渋味におよぼす食用油の影響. 調理科学, 19, 119-124.
果皮に多く含まれる渋みと栄養
クロロゲン酸は種子>外果皮>芯>中果皮の順に多く含まれています。また、なすの成長とともに量が増えることがわかっています。クロロゲン酸やポリフェノール量は米ナスの方が加茂ナスよりも高く、炒めた場合の渋味は米ナスの方が強いこともわかっています。
- 黒澤祝子 (1986) ナスの種類とポリフェノールおよび渋味について. 同志社家政, 20, 46-52.
チーズと相性が良いなすの渋み
クロロゲン酸含量は果皮の方が果肉よりも多く、果肉中のクロロゲン酸含量は、小ナス>米ナス>中長ナス>長ナス>白ナス>加茂ナス>水ナスとなっています。加茂ナスは渋味が少なく日本料理向き、また、水ナスは渋味が少ないため生食向きです。チーズとの相性は、クロロゲン酸量が多い小ナス、米ナスが良さそうです。
- 中尾有美子ほか (2006) ナスの種類別、調理別におけるポリフェノールとラジカル捕捉能について. 同志社大学生活科学, 39, 39-46.
油を使った料理で渋みを抑える
食用油を添加して煮たり炒めたり揚げたりすると、渋味が弱まります。また、油で炒める前に水にさらすと、クロロゲン酸が油に移行する割合が増えるため、渋味を感じにくくなります。
- 黒澤祝子 (1998) 食用油調理におけるナスの全ポリフェノールとクロロゲン酸について. 調理科学, 21, 133-136.
なすの甘み
果肉の甘みを楽しむ
開花後の糖含量の変化を測定すると、品種にかかわらず、かなり小さい果実からぼけナスとなる頃まで糖含量は一定(約3%)です。果実の部位では一番太い部分が甘いことが分かっています。
- 今田成雄 (2004) ナスはいつ頃甘くなる?. 野菜園芸技術9月, 20-21.
甘みを楽しむ焼きなす
焼きなすにした場合、成分に変化はありませんが、官能的な甘味は増加します。弱い力をかけた時にしみ出るエキス量の差が味に影響するためです。
- 黒澤祝子 (1998) 食用油調理におけるナスの全ポリフェノールとクロロゲン酸について. 調理科学, 21, 133-136.
三次機能機能性
機能性 | 注目物質・概要・参考文献 |
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なすの渋み成分であるクロロゲン酸はポリフェノールの一種で、抗酸化性が強く、糖の吸収阻害、血圧上昇抑制、体脂肪分解などの機能性が認められています。クロロゲン酸は、コーヒー酸とキナ酸という物質が結合した構造を持つ化合物で、コーヒー豆から初めて単離された物質です。熱に不安定で容易にコーヒー酸とキナ酸に分解することがわかっています。
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ナスニンは、なすの果皮に含まれるアントシアニン系色素の一種で、強い抗酸化性を示します。ナスニンは、活性酸素消去に高い能力を示し、アントシアニン類の中でも特に強い活性を持つことが明らかになっています。
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なすには、他の野菜と比較してコリンエステルが沢山含まれており、ヒトの血圧上昇を抑える働きと気分改善効果が認められています。ナス搾汁粉末を続けて摂取することにより、血圧の改善や気分の改善効果が確認されています。
詳しくはコチラ
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人の体内にも広く存在しているGABA(γ-アミノ酪酸)には、血圧低下の作用や気持ちを落ち着かせてストレスを和らげる働きがあります。なすには、GABAは少ないのですが、60℃に温めることで、アミノ酸の一種であるグルタミン酸がGABAに変化します。調理法にひと工夫加えると、血圧の管理に役立ちます。
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