活用事例

Vol.27

失敗から学んだデジタル農業との向き合い方

須崎市 シシトウ農家

古川裕典さん

農家

環境測定装置を導入したきっかけを教えてください

当初から環境測定をベースとした農業をしたいと思っていたからです

私は、Iターンで高知に来て、新規就農としては2018年からです。私の場合、農業をはじめようと思っていた時期に、高知県庁の職員さんに農業の科学的なお話を伺う機会がありまして、そこではじめて環境測定をベースとした農業というものを知りました。経験の溝を埋められる、失敗を減らすことができるという部分に強く惹かれ、その後も2016年から担い手育成センターで3年間の環境データを使った農業の研修を行うなど、かなり早い段階から「いずれは環境測定をベースとした農業をしよう」という計画がありました。ハウス建設の際には、環境測定装置をはじめ、天窓の制御装置、灌水装置、炭酸ガス発生器などを導入しました。


実際にご自身のハウスを持たれてからはどうでしたか?

実は最初の1〜2年は失敗の連続で、当初の計画通りには進まなかったんです

初めは習ったことをそのまま自分のハウスで実践していました。それが一番失敗しないと思っていたからです。ですが、9月の定植から生育状況は予定通りに進まず、12月の時点でかなりの赤字を出してしまいました。私自身も「なぜ上手くいかないか?」を考えましたが、結局原因は分からずじまいで、後に先輩の農家さんやJAの職員さん、普及指導員の方に相談を持ちかけました。彼らに実際に自分のハウスを見てもらうと、こちらの環境設定とハウス環境との「ズレ」をいくつも指摘され、それに合わせた環境設定の調整や、栽培方法の見直しなどの指導を受けました。それまでは、データというデジタルな数値ゆえに「そこだけを見ていれば大丈夫」という自信がありましたが、実際は自分の圃場や感覚とマッチングさせていく必要があり、むしろその部分が最も重要だということを知るきっかけになりました。


現在はどのような部分に気をつけて運用していますか?

圃場におけるソフトとハード、その両方の情報を見ることを心がけています

最初の作での失敗から多くを学び、環境制御装置などソフトの部分だけでなく、土壌などのハード部分の情報にも注目するようになりました。以降は、年々栽培が安定するようになり、収量増加にも繋がっています。また現在は、圃場の各種データなどは、記録用に印刷して保管しており、圃場に変化があった時などは「自分なりに仮説・考察を立てて、一度相談する」ということも心がけています。
新規就農者にとってトライ&エラーは避けては通れない部分だとは思いますが、そういった時に近くに指導してくださるJAの職員さんや普及指導員さんがいるのは、とても支えになります。今後、環境測定装置の導入を考えている方は、ぜひサポート体制についても考えてみて欲しいです。

SAWACHIは、他の情報と合わせて活用している状況です。スマホでSAWACHIの環境データを外で確認できるようになり、現場のスタッフにタイムリーな指示を出すことが可能になりました。一方で、収穫量などの圃場外で記録されたデータなどに関しては現場と少なからずタイムラグが生じてしまうので、取得する情報によって活用方法を模索している段階です。また、最近追加された市況の情報などはとても参考になっているので、今後のアップデートに期待しています。


IoPプロジェクトにどんなことを期待していますか?

経営者として役立つ情報なども発信して欲しいです

個人的に興味があることは、環境制御技術が導入されることで実際にどれほどの経費削減が可能で、収量がどれくらい上がったのかというデータを取得できる機会が増えて欲しいと思っています。農業もビジネスですので、大きな圃場などでは雇用者数も多いと思います。私たち農家の仕事は、良いものを安定して作ることですが、それと同時に経営が安定するハウスを運営していくことです。現在SAWACHIや、統合環境制御装置の実証試験に協力している最中ですが、環境データや使用感だけでなく、経営者視点の意見なども、今後の展開に向け活用していただけたらと思っています。