活用事例

Vol.20

IoPの重点テーマ、ナスの光合成を「見える化」

高知県農業技術センター 作物園芸課

山﨑浩実さん 永尾航洋さん

山﨑浩実さん:先端生産システム担当 チーフ
永尾航洋さん:先端生産システム担当 研究員(写真)

研究者

どういった研究をしていますか?

着果数と開花数をWebカメラで自動カウント。

終えたばかりの研究としては、ナスの着花数と開花数を自動カウントする技術開発があります。高知工科大学との共同研究で、ハウス内にWebカメラを設置し、その画像を使ってカウントすることのできるAIを開発しました。花がどれほど咲き、どれだけ実になるのか、ということは収量に直結します。ですから、花と実の数を知ることはとても重要なのですが、農家は日々の管理作業に追われて、これらをカウントすることはできません。そこで、カメラ画像から花と実の数を自動で検出することを考えました。これがナスの花、これがナスの実だと、AIに学習させるところから開始。ゼロからのスタートでしたが、3年間の研究によって、検出率をだいたい70%まで高めることができました。


いま重点的に取り組んでいる研究は?

ハウス内の環境データとカメラ画像から、光合成を「見える化」

光合成の「見える化」に関する研究に力を入れています。植物の成長や収量に大きく関係しているのが光合成です。光合成で大事なのは、光と温度、CO2などのハウス内環境です。高知県では、ハウス内の環境を「見える化」する機器が全国トップレベルで普及しています。こうしたハウス内環境を使って光合成が「見える化」できれば、これまで生産者の”勘や経験”に頼っていたハウスない環境のコントロールを、論理的に行うことが可能になります。光合成の「見える化」にあたっては、大きく2種類のAIを開発しました。1つが、環境データから葉の単位面積あたりの光合成量を推定するAI。もう1つが、カメラで撮影した植物の画像から、全体の葉面積を推定するAIです。この2つのAIの出力値により、植物全体の光合成の「見える化」が実現しました。


「見える化」はどこまで進みましたか?

判定の精度は9割以上にまでアップ。

光合成の「見える化」は、3年間の高知大学との共同研究によって、9割以上の精度で判定できるようになりました。これまで農業技術センターが調べてきた膨大なデータをAIに学習させることにより、高い精度が実現できたと思っています。


研究の目標を教えてください。

様々な「見える化」を進め、最終的には収量の推定を。

光合成の見える化は、主にナスとニラで研究を進めてきましたが、これからは他の品目でも取り組んでいきます。ナスでは光合成だけでなく、着果数、開花数、果実の肥大などに関する情報も見える化し、最終的には、農家さんが最も知りたい収量を推定できるようにするのが目標です。
光合成を見える化するAIエンジンは、IoPのクラウド「SAWACHI」に載せられており、令和4年度からは現場の生産者も見ることができるようになる予定です。先進的な生産者の皆さんは、光合成の見える化に期待してくれています。SAWACHIのデータをグループで共有すれば、地域の生産技術力は一層上がっていくことでしょう。