AIを使った出荷予測システムの開発インタビュー

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3月22日に開催された「令和3年度 出荷予測システム開発」業務完了報告会の終了後、開発を担当された株式会社Nextremerのプロジェクトマネージャー喜多俊之さんとプロジェクトメンバーの横田俊介さん、筒井賢さんにAIを使った出荷予測システムについて伺いました。

Q:2022年3月で完了した「出荷予測AIエンジンの概念実証」とは?

実現可能か、効果はどれくらいか、AI開発に欠かせない検証です。高知県の委託を受け、将来的にIoPクラウドに実装が予定されている出荷予測AIエンジン開発の前段階として実施した工程です。いきなり予測システムをクラウドに実装してしまうのではなく、本当に実現可能なのか、どれくらいの効果が見込めるのかなどを事前に検証するために行いました。一般的なシステム開発でも実施しますが、特にAIでは必須といわれる工程です。 今回はナス、ピーマン、キュウリを対象に、分析に用いるデータの選定やどのようなアルゴリズム(計算方法)が最適かなどを検証しました。

 

 プロジェクトマネージャー 喜多俊之 氏
 プロジェクトメンバー 横田俊介 氏 筒井賢 氏

 

Q:検証はどのように進めたのですか?

検証は、有識者の知見を活かした検討会で、改善を重ねながら行っていきました。2021年11月から翌年3月まで、5回の検討会を行いながら、2週間先の出荷予測のための分析に使うデータの選定やどのような予測アルゴリズムが最適なのかといった検討をしました。弊社のほかに、気象や農産品の出荷、栽培など、それぞれに詳しい方に参加していただき、皆さんの知見を持ち寄って、ディスカッションしながら進めていきました。回を重ねるにつれて、予測精度の改善が見られたほか、今後の課題の洗い出しなどもできました。

また、検証にあたっては農業現場を実際に知っておく必要があるということで、高知県農業技術センターを視察させていただきました。「試験場で実際にどのように栽培されているかを見させていただき、とても参考になりました」と弊社スタッフが話していました。

 

 

Q:植物の予測という点での難しさは?

例えば製造業であれば、すべてが人為的に造られる工程の中で予測するので、何が原因で予測の当たり外れが起こるのかを比較的究明しやすいのですが、農作物は生き物なのでわかりにくい部分がありました。植物の個体差やランダム性が存在しているので、そこで予測の精度を上げることの難しさを感じました。実際に、対象とした野菜の中では、ピーマンの予測精度がほかに比べて上がりませんでした。作物の性質によるものだけでなく、栽培方法の違いなどの人為的な理由でも予測の難易度が変わってくるので、そこを突き詰めていかなければならないと思います。 一般論をいうと、AIはブラックボックスで、「なぜかわからないが、この程度の精度で予測できる」というものです。ただし、ここ数年、「なぜ?」がわからないと何となく信用できない、ということがAIの課題になっています。IoPプロジェクトが個別農家の営農支援を行うことも目的であることを考えると、どのような変数が効いているとか、どのような気象のパラメータが効いているかなどがわからないと支援に使えないことから、説明性の高いものになることを目指しました。

 

 

Q:AI×農業の可能性について、どのように考えますか?

労働力不足であったり、経験値に依存したりといった一次産業の課題に対して、ITやロボットも含め、AIを使って解決することは、未来に向けてより効率的な農業を行うための大事な取り組みです。特に農業においては、AI×農業は活用していくべき分野ではないでしょうか。出荷量予測だけでなく、画像認識などを使って農業を最適化していくには、AIは不可欠だと思います。今回の検証においても、部分的には課題があるものの、将来的にブラッシュアップしていけば、戦略的な農業を行える可能性が見えてきました。

今回、県内の農家さん数件を訪れ改めて認識したのは、ITの知識やITの活用に関する意識の違いです。毎日の農作業で取得したデータをどう活用するかそれぞれの農家さんで差があるのは当然だと思います。これからはさまざまな農家さんが効率よく農業を営み、他県に負けない農産物を出荷するためには、取得したデータをどのように活用すれば有効的であるかを考えることが大切になってきます。

私たちは、県内の高知県農業技術センターやJA関係者のご協力を仰ぎながら、引き続き「出荷予測システム開発」に携わることで高知県の農業の未来に少しでも貢献したいと考えています。