「令和3年度 出荷予測システム開発」業務完了報告会

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将来はIoPクラウドへ実装され、IoPプロジェクトにおけるメインエンジンのひとつと位置付けられる「出荷予測システム」。AIを導入することが予定されているが、開発の前段階として導入効果を検証する概念実証「令和3年度 出荷予測システム開発」が行われ、3月22日の業務完了に合わせて報告会を開催。高知県から業務委託を受けた株式会社Nextremerのプロジェクトマネージャーである喜多俊之氏より発表が行われた。

喜多氏は今回の業務の目的について、「出荷予測システム開発の一環として、ハウス環境データ等を活用した出荷予測モデルに対する実証実験を行い、予測モデルの構築とその特徴や課題などの知見を得ること」と説明。2021年11月から翌年3月まで、ナス、キュウリ、ピーマンの3品目について、分析に用いるデータの選定やデータの処理を実施し、予測アルゴリズム最適化の検討と評価を実施したことを発表の中で振り返った。

「検証を進めるうえで実施した5回の検討会には人工知能技術や農業、気象など、それぞれの専門分野の有識者に参加していただき、それぞれの知見を活かして議論を重ね、予測モデルについての議論を重ねた」と喜多氏。検討会ではアルゴリズムの選定やデータに関するディスカッション、気象データの分析などが行われた。第2回の検討会では出荷量データのみを用いて、予測値とMAPE(誤差の度合いを%で表したもの)を参考値として計測。MAPEの目標値をプラスマイナス10%以内に設定していたが、15%以内の予測ができ、ベースラインとしてはいい滑り出しを見せたという。さらに、日照量データや市況価格データの分析、野菜別の出荷量データの収集などを行い、検討会を重ねるごとにMAPEが改善された。

「個別農家の営農支援に資する知見を得るために、IoPクラウドに集められた農家さんのデータも分析。画像認識を用いて検出された着花数/着果数のデータで、出荷量との間に弱いながらも相関関係が見られた」と述べ、今後求められる個別農家の営農支援のためのアプローチをしたことも語った。

5回にわたる検討会とデータ分析などにより、使用するモデルは営農支援にも使える説明性の高い予測モデルが適し、また分析に用いるデータについては日照量データが最も有効であると結論づけた。検討会などの過程で決めた方針をもとに行った最終的な予測については、作物別のMAPEはナス約10%、キュウリ約12%、ピーマン13~17%という結果が出た。

出荷予測システムに関わる今後の課題について喜多氏は、「ピーマンの予測精度が、他品目と比較して低いことが最大の課題だ。特に厳寒期における周期の変動があまり予測できておらず、植物生態学に基づくモデリングや、各農家の栽培方法によって起こる変動などを考慮する必要がある」と考えを明かした。また、データの蓄積については、業務開始当初は一部の出荷量データが揃っていなかったことから、欠損を抑えるためにはデータ取得頻度の一定化が重要であり、目的に応じたデータ収集の継続的な検討を指摘した。

IoPクラウドに集まる農家からのデータについて、「最も特色のあるデータのひとつが、画像認識技術を用いて収集している着花数/着果数データだが、取得方法が最善ではない可能性がある。着花数/着果数は出荷数を予測するために有用なデータになると考えられるため、改善に向けた今後の研究を期待したい」と課題を提示した。

最後にまとめとして、今回の検証によって目標精度に達する品目が得られたことや、目標には達しなかったものの、将来的な精度向上に資する分析結果や知見を得ることができたと総括。「今後も各種研修および研究開発を行い、課題を解決していくことで、人工知能技術を用いた次世代型施設園芸農業の進化を支援していくことができると考えられる」と将来の展望を示唆して締めくくった。

高知県では今回の報告を受け、2022年度以降、AIエンジン実装に向けての方針などを定めていく予定だ。