第7回四国オープンイノベーションワークショップ  -基調講演-

特集

基調講演

「IoPプロジェクトのこれまでとこれから」

IoPプロジェクト事業責任者 高知大学理事 受田浩之氏

受田氏は講演冒頭で、「IoPをテーマにワークショップが開催されるまさにこの日、高知大学の全学組織としてIoP共創センターが開所した。本日はまるでIoPずくめで、我々にとって非常に輝かしい日になった。これを記念して、10月29日を『IoPの日』に制定するのはどうか」と提案し、来場者は笑顔と拍手で応えた。

IoPプロジェクトとはいったいどのような取り組みなのか。「インターネットがモノ(things)につながっているのがIoT。IoPの『P』は『plants』のことで、インターネットが植物につながっているというイメージでとIoTを農業に特化させたものだ」と解説。具体的には「数多くのハウス内の植物の光合成や蒸散、転流といった生理生態情報をインターネットを介してクラウド上に集約。農家さんが自由にアクセスしてデータをチェックし、栽培管理を最適化して収量を上げることを目指す」と狙いを話した。

IoPプロジェクト事業責任者 高知大学理事 受田 浩之氏

高知県は現状、施設園芸に関しては日本屈指のレベルにあるが、「IoPによって生産性や農家所得をさらに向上させ、施設園芸農業を飛躍的に発展させたい。2018年から2027年までの10年間で、野菜の産出額を130億円高め、新規就農者を1000人増やし、施設野菜の労働生産性を20%高めていく。加えて、施設園芸関連産業で100億円の売り上げを目標とする。これがIoPのKPI(重要業績評価指標)だ」と野心的な目標を掲げてプロジェクトの推進を図っていくと語った。

研究開発の進捗状況については「IoPの研究者は現在130人。研究の目標と成果を明確にし、外部評価も行うことによって研究費に強弱をつける、あるいは改廃を行っていく。研究はIoPクラウドと直結していることを重要視し、厳格に評価する。こうした研究開発の中核施設となるのがIoP共創センターだ」と話す。「現在、すでに実証段階に入った研究もあり、農業に関わる様々なデータを集約した産学官データ連携基盤(IoPクラウド)の上に、作物生理生態・生産出荷予測・生育診断の3つのAIエンジンも搭載予定。これらをもってクラウドの“見える化”から“使える化”、 “共有化”のフェーズへと進めていく」と研究開発は順調に進捗していると紹介した。

人材育成にも重きを置いて取り組む。「学生教育については県内3大学が連携したIoP教育プログラムを学士課程で、IoP連携プログラムを修士課程で学べるようにした。予想以上の反響を持って受講してもらっている。社会人教育については、生産者を中心にIoP塾を開講。プログラムはアーカイブで開示しているのでいつでも見てもらえる」と幅広い世代に向けてIoPの魅力を伝えようとしている。

IoPプロジェクトは施設園芸の枠にとどまらないという構想も披露。「IoPクラウドが関連産業の活性化に貢献し、さらに他分野の産業とコラボレーションすることも可能だ。大きな付加価値を創出するプラットフォームとして、市場がどんどん広がっていくというイメージを持っている」と将来を見据えている。受田氏は講演の最後、「グローバルな視野で展開していくので、多くの皆様にこの事業に参画いただきたい」と呼び掛けて締めくくった。