高知高専・高知工科大学で最先端の技術シーズと地域課題解決の現場に迫る
◆教育・研究機関から未来の農業を切り拓く技術シーズを発見
令和8年8月21日、IoPプロジェクトにおける技術交流と会員相互の研鑽を目的とした「IoP技術者コミュニティ 令和8年度施設見学会」が開催されました。IoP技術者コミュニティは、これまで農業分野の施設見学を実施していましたが、技術者コミュニティに高知工業高等専門学校(高知高専)がメンバーに入ったことから、今回初めて学校訪問を実施することとなりました。今回の見学会では、地域の技術シーズの発見と農業現場への応用可能性を探るため、高知高専と高知工科大学の2つの教育・研究機関を訪問しました。高知市内からバスで移動した参加者は、最先端の施設やものづくり拠点の見学会、環境制御・ロボット技術に関する研究紹介、さらには話題の四足歩行ロボットの実演・意見交換を通じて、次世代のスマート農業を担う研究者や学生らと密度の濃い時間を過ごしました。

◆高知高専:アントレプレナーシップと地域課題解決を育む拠点「起業家工房・IoT工房」
はじめに訪れた高知高専では、学生のアントレプレナーシップ(起業家精神)を育み新しいアイデアやビジネス創出をサポートする「起業家工房」や、地域主力産業である一次産業などの課題を、学生が最新のIoTツールや技術を駆使して地域の人々と共に解決を目指すものづくりスペース「IoT工房」が見学先として紹介されました。 ロボットアームの実物を前にしながら、性能の説明から具体的な活用例までが提示され、「単にロボット工学を追求するだけでなく、農業などの事業へと結びつけていくための戦略や活用法まで考える必要がある」という実践的な視点が共有されました。また、最新の3Dプリンター紹介では、生き物の骨のような硬いパーツと皮膚のような柔らかい材質を同時に成形できる先進技術が披露され、農業資材やロボットパーツなどへの実用化に向けた多様な可能性について、参加者の間でも大いに盛り上がりを見せました。


◆高知高専:環境制御・ロボット技術によるスマート農業の実践研究
続いて行われた研究紹介では、高知高専から5名の教員が登壇し、それぞれの専門分野における先端的な取り組みが発表されました。発表内容は、収穫ロボットの高精度な制御技術やVR・AIを活用した遠隔操作・自動化システムをはじめ、水耕栽培における環境データ分析、さらには人と自然の営みを探る環境史やソーシャルデザイン工学といった社会課題解決へのアプローチまで多岐にわたりました。ロボット工学・制御工学・データサイエンス・社会工学など、幅広い学問分野が融合した高知高専ならではの重厚な研究成果に対し、参加者は終始熱心に耳を傾け、地域の一次産業の未来を拓く多様な技術シーズへの期待が高まる場となりました。
※登壇いただいた先生と講義の内容
・中山 信 先生:収穫ロボット向けアクチュエータの振動抑制制御/植物生長の指標化とモデル予測制御
・大角 理人 先生:水耕栽培液中アンモニア態窒素の分析評価
・脇田 翔平 先生:LiDAR による環境地図構築/自律移動ロボット制御/深層学習による画像認識
・吉岡 将孝 先生:VR による収穫ロボット操作/機械学習を用いた自動収穫システム開発
・楠瀬 慶太 先生:社会課題と工学の融合(ソーシャルデザイン工学)/ 人と自然の営みを探る環境史





◆高知工科大学:不整地や細い農道を走破するロボット技術と研究紹介
次に訪問したのは高知工科大学(香美キャンパス)。情報学群 画像情報工学研究室(栗原徹教授)の研究室にて、画像認識や自律移動技術に関する先進研究の紹介が行われました。 研究紹介では、圃場(ほじょう)の細い農道や凹凸のある環境下でも、ロボットが経路をしっかりと認識して自律走行する動画などが披露されたほか、LiDARによる環境地図構築や深層学習を用いた画像認識技術を活用し、「人の目を超える見る力」をロボットへ実装することで、果樹園での運搬・摘果支援や収量予測といった高度な現場課題へ挑む姿勢が示されました。


◆高知工科大学:廊下や階段を舞台にした四足歩行ロボットの実演と「現場目線」の意見交換
研究室前の廊下や階段では、学生による四足歩行ロボットのデモンストレーションが実施されました。デモと合わせて、学生から農業現場での実用化における最大のポイントとなった「人物認識」について解説があり、現在は赤いビブス(識別用ベスト)を着用することでロボットが対象者を的確に識別・追跡するプログラムが組まれていることが説明されました。また、荷物の有無による稼働時間の変化など、現場運用を想定したリアルなデータも紹介され参加した農業関係者から高い関心が寄せられました。


◆「農家の方に寄り添った研究開発を」現場との交流から芽生える学生たちの想い
実演の最中には、参加した技術者から「ビブスを着用する代わりに、服にワッペンをつける形にしてみてはどうか」といった、より現場の作業感に即した具体的なアイデアが提案される場面もありました。 こうしたディスカッションを受け、実演を担当した学生からは「参加者との意見交換を通じていろいろな気づきが得られた。今後はコストや利便性にもより着目し、真に農家の方々に寄り添った研究開発を進めていきたい」という力強い言葉が聞かれました。大学の中だけでは得られない「現場目線」のフィードバックが、若き研究者・技術者たちの成長とモチベーションを刺激する貴重な機会となったことが伺えました。

現場の課題意識を持つ参加者と、柔軟な発想で技術に挑む高専・大学の研究者や学生たちが直接対話した今回の見学会。単なる技術見学にとどまらず、現場とアカデミアが手を携えてIoPプロジェクトを次のステージへと進化させる、大きな熱量を感じさせる一日となりました。
