令和8年6月18日、第2回となる「IoPトマト栽培 合同授業」がオンラインで開催されました。授業には、IoPデジタル教材を活用して実証試験に取り組んできた高知県立農業大学校・高知農業高校・幡多農業高校の3校が参加しました。各校による成果発表に加え、トマト農家による栽培のPDCAサイクルや専門家による最先端のAI画像解析技術に関する講義も実施され、次世代の農業を担う若き実践者たちがオンライン上で活発に知見を共有し合いました。

1.学生発表
各校のトマト栽培チームが、自分たちの栽培データ(R7~R8)をもとに研究結果や考察について発表を行いました。
●幡多農業高校の発表内容
生育のデータ比較
栽培した3品種(フルティカ・スーパーなつめっ娘・エンペラー)の生育のデータをグラフで比較すると光合成速度は幡多農業高校と高知農業高校ではあまり差が見られなかった。花房の着果数の推移が収穫量の推移と近い動きをすることから、一つの植物体のデータから全体の収穫量予測ができることが分かった。
食育と安全性の両立
安心・安全を保証する「GAP認証」の獲得を目標としたトマト栽培管理スキームを実践。
- 「はたのう市場」での地域へ向けた販売
- 栽培した野菜の給食採用による「食育」推進
「海苔」を活用した糖度研究
四万十青のりの廃棄品を活用し、「海苔」の持つミネラル成分に着目した高糖度トマトの栽培研究を実施。
- 地域産業の副資材を活用した独自研究
- 糖度向上プロセスと生育影響を精緻に追究
- 自分たちがデザインした肥料袋にてオリジナル肥料を制作中。
●高知農業高校の発表内容
品種データと散布図による分析
栽培した3品種(桃太郎ホープ・アイコ・フルティカ)の蓄積データを振り返り、精密な相関分析を実施。グラフにすることで、高糖度が出やすいトマトのサイズが分かった。今後は、糖度が高かった時の環境条件を調べて、ハウス環境を調整していく。また、専門機関での味覚調査も検討している。
- 総収穫量に対する正規品・規格外廃棄品の比率算出
- 果重・糖度の実測データから散布図を作成
- 相関係数、最大糖度の傾向を分析し、栽培のボトルネックを特定
●農業大学校の発表内容
数品種の収量グラフ分析
「シルビアーナ」「桃太郎ホープ」の2品種を選定し、栽培結果の定量的データを基に比較。グラフからは、着果と収量の相関は見られなかった。着果したものすべてが収穫につながる訳ではないことが分かり、品種ごとの特徴や栽培管理の不備が原因と考察した。
- 着果数・収量グラフの作成
- 推移グラフの比較検証から品種ごとの特性を考察
天敵昆虫導入によるエコな防除
実証中にコナジラミによる黄化葉巻病が発生し、天敵昆虫を使った環境に優しい防除を実践。しかし天敵昆虫が増えすぎてトマトを加害し、生長点が折れる株が発生した。
- 天敵昆虫「タバコカスミカメ」の実証導入と結果分析




2.【講義】データ活用によるシュガートマト栽培のPCDA
JA高知県日高支所ハウス園芸部会の大川内氏が、自身が昨年度に直面したリアルな「課題データ」を分解。そこから今期の目標値を設定し、具体的な計画・アクションを組む一連の流れをレクチャーしました。3つの課題として①栽培初期の小玉化、②黄化葉巻病対策、③年間通しての着果数の維持を設定。栽培品種を変更することで、低糖度の規格外品の割合が減少しました。そして、年間収量では過去平均比で118%にアップしました。また天敵の定着により殺虫剤散布が過去平均11回から6回に減少し、散布の労力や費用の抑制に繋がったことを紹介しました。次作の計画では、高温時期の着果数の維持を目的に、新品種の転換や理化学研究所の知見である植物の環境ストレス耐性を高めるとされる酢酸の活用などの発表がありました。このようなPDCAを実践した栽培管理や説得力のあるスライド構成は、学生たちの今後の発表・研究発表用の資料作りとしても非常に参考となる内容になりました。


3.【講義】農業におけるAI画像解析技術
高知県IoP共創センターの南特任研究員より「農業におけるAI画像解析技術」の講義が行われました。 まず、最新のAIの動向に触れ、自動車業界の自動運転技術での活用、医療でのがん細胞の検出や皮膚病変の識別、エンターテイメント業界での画像及び動画作成や画像の自動補正、農業での生育状況のモニタリング、作物の病気や害虫の早期発見に繋げていることが紹介されました。農業でのAI活用としては、トマトの花・つぼみ・果実の識別とトマトの特定部位の抽出と茎径の推定をリアルタイムで行う動画を視聴。熟練農家の「見る力」をデジタル再現するAI画像解析の可能性が紹介されました。一方で、多角的な生育指標の完全再現にはデータや処理能力の課題もあると指摘。大量な学習データの必要性やグラフィックを処理する高性能なGPUが搭載されたPCが欠かせないことが挙げられました。講義の終盤では、春野できゅうり栽培に取り組んでいる農家のAIコンサル活用を紹介しました。具体的には生育状態に合わせた肥料のレシピをAIで作成し、肥料代の節約に繋げたことや最新の論文に基づいたAIの指導により炭酸ガスを施用するタイミングを調整している実例が紹介されました。総括では、将来的な農業AIの自動化・コンピュータの高性能化によるさらなるAIの発展への期待も語られ、学生たちが先進技術の現状とAIを活用したこれからの農業について熱心に耳を傾けました。


4. 次回の合同授業に向けて
AIモデルを学生が作成
今回の発表では、新たにIoPデジタル教材へ追加された「AI画像解析機能」を活用し、デジタル技術を駆使した学びが披露されました。次回の合同授業では、さらに一歩進んで「各校でのオリジナルAIモデルの作成~トマトの果実数を検出~」を予定しています。
- 作成したAIモデルの実証: 実際の現場で上手に機能・作動するか?
- 学校間の比較と学び: 他校のモデルやアプローチと比較して何が学べるか?
トマトの栽培技術はもちろんのこと、先端デジタル技術への理解と活用力を一層高めていく生徒・学生たちの成長に、今後もご注目ください!

