第7回四国オープンイノベーションワークショップ  -レポート-

イベント

産業技術総合研究所(産総研)四国センターは四国6大学包括協定の位置付けのもと、2021年10月29日、「第7回四国オープンイノベーションワークショップ」を高知市高知城ホールで開催した。

産総研では公設試験研究機関や大学と連携し、四国の産業界、特に中小企業のIoT化・AI化に向けて「IoT/AIモノづくり四国ネットワーク」の活動を推進している。本ワークショップはその中心的な取り組みとして、四国4県それぞれに適したIoT/AI推進プランを議論する場として開催されてきた。

今回のワークショップは、高知県の施設園芸農業分野で推進されている「IoP(Internet of Plants)プロジェクト」がメインテーマ。最新の施設園芸関連機器、IoT・AI技術の普及と関連産業の集積を目指す同プロジェクトについて議論された。

なお、新型コロナウイルス感染症の影響を考慮し、一般参加者はオンラインで聴講する仕組みで行われた。

ワークショップは産総研四国センター所長、原市聡氏の挨拶で開幕したのち、IoPプロジェクト事業責任者である高知大学理事、受田浩之氏が「IoPプロジェクトのこれまでとこれから」と題して基調講演。「次世代型施設園芸農業にIoTやAIなどの先端技術を融合し、進化させたものがNext次世代型施設園芸農業だ。インターネットが植物につながっているというイメージで『IoP』と命名した。ハウス内の環境や作物の収穫時期、市場の情報などが自動的にネットを介してクラウド上に集積する。このIoPを利用することによって、もっと楽に、楽しく、稼げる農業の実現を目指していく。2018年からの10年間で、県内の野菜の産出額を130億円高めるとともに、新規就農者を1000人増やすことが目標だ」とIoPプロジェクトの狙いや展望を語った。

産総研四国センター所長 原市 聡氏
IoPプロジェクト事業責任者 高知大学理事 受田 浩之氏

研究発表1

「Internet of Plants(IoP)の挑戦~作物生産のDX~」

基調講演に続いて、IoP推進に深く関係する3者が研究発表。まず高知大学IoP共創センター長、北野雅治氏が登壇し、「工業は製造工程をすべてコントロールされているが、農業は天候に左右されて人間の思うようにならない。これまではITやAIを導入しにくいと思われていたが、ここを改善しようとチャレンジしている。『稲のことは稲に聞け、農業のことは農民に聞け』という先人の言葉がある。これを実現しようとするのがIoPで、農家の創意工夫をみなで共有しようというものだ」とIoPの狙いを説明した。

進捗状況については「現在、ハウス内の光合成や花数、着花量などがすべて“見える化”されている。栽培が上手な人とあまりうまくない人の違いがどこにあるのか、データで事細かく見えるわけだ。たくさんの農家さんに使ってもらって、“使える化”をどんどん進めていく。そうなれば、さらに多くの情報をみなで “共有化”することができる。このIoPによって、これからの農業を変えていきたい。さらに水産業や林業、災害なども “見える化”“使える化” “共有化”し、『Internet of Kochi』にしていきたい」と未来に向けた展望を語った。

高知大学 IoP共創センター長 北野 雅治氏

研究発表2

「Next次世代施設園芸農業でのJGN/SINETの利活用とAI・IoT・ICTによる省力化・情報共有」

次いで、高知工科大学情報学群教授、福本昌弘氏が、工学研究者としての立場から研究発表。「民間のネットワークはお金がすごくかかるので、ただで使えるものを利用している。ひとつは国立情報学研究所(NII)が運用しているSINET5。複数の経路があって、障害に強いネットワークだ。もうひとつは情報通信研究機構(NICT)のJGNで、研究開発用テストベッド環境などを特徴としている。さらにLPWAやローカル5Gなどを組み合わせ、地域のなかで情報共有できないか、研究に取り組もうとしているところだ」と紹介。

高知工科大が農業に貢献できることとして、「認識やAIを使った作業の自動化、省力化などに取り組んでいる。例えば、光を波長ごとに分けて撮影するハイパースペクトルカメラでピーマンを撮影すると、実と葉と茎を分けてデータに収めることができた。これは世界初の発見だ。このカメラは非常に高価だが、安価なウェブカメラに光学フィルターをつけると同じ効果がある。こうした研究を進め、将来的には夜中にも撮影可能なロボットを開発したい」と新しい農業の創出へ意欲を語った。

高知工科大学 情報学群教授 福本 昌弘氏

研究発表3 

「IoP(Internet of Plants)で進化する高知の施設園芸」

研究発表の最後を務めたのは高知県農業振興部、IoP推進監の岡林俊宏氏。IoPによって高知県の施設園芸がどう進化しているのかについて詳しく紹介した。「高知県の農耕地面積は狭いが、環境制御によって生産性を高めてきた。施設園芸が全国トップクラスなのは、農家の意識が高く、新しい技術にどんどんチャレンジして実践してきたからだ。現在、県内の3分の1以上のハウスで、データ駆動型農業に取り組んでいる。これをさらに進化させるということで、IoPによって作物側の反応が“見える化” され、最適な指導ができるような環境が構築されてきた」と高知県の農業の先進性を強調。

高知県の一番の功績は「スマートシティで絶対にぶつかる点をクリアしていること」。それは個人情報の扱いに関するもので、「農家さん1軒1軒と知事との間で、『あなたのデータを経営・栽培改善のために使わせてもらう。さらに、高知県の農業発展のためにも使わせてもらう』という同意を取っている。これによって、農家さんのデータを大学や企業が利用することができる」と人口の少ない地方ならではの課題解決の取り組みを明かした。

高知県農業振興部 IoP推進官 岡林 俊宏氏

研究発表が終わるといったん休憩。その後、高知大学次世代地域創造センター長の石塚悟史氏がファシリテーターを務め、6人のパネリストが参加するパネルディスカッションを実施。「“高知発”一次産業DXにおける産業創出について」をテーマに活発な意見交換が繰り広げられた。

高知大学次世代地域創造センター長 石塚 悟史氏