IoP農業研究会は、県や大学で進めているIoP研究の成果を、栽培現場で使える技術として研究者と生産者が一体となって活動する組織です。IoP研究の中心は植物の生理生態を可視化して栽培に活用できる情報を提供することですが、これまでの活動をとおしてまだまだ生産者の皆様への認知が進んでおらず、活用されているとは程遠い状況にあると感じております。
特に植物の動きをベースに進めている研究のため、植物生理の理解がないと「なんだかよく分からないから使えない・・・」という反応をいただくのも致し方ないことだと思います。
そこで本コラムでは、基本的な植物生理や栽培環境についての内容をトピック別に紹介して、日々の栽培における気づきや課題解決に役立つ情報を、定期的に発信していきたいと思います。長すぎず、複雑すぎず、でも何だか知って得するような内容を心がけますので、お時間あるときに拝見いただければ幸いです。
さて第1回目のテーマは
「環境制御をするメリットって何?」です。
環境制御技術とかデータ駆動型栽培技術とか昨今いろいろ言われていますが、そもそも植物栽培の環境を制御すると何が良いかについてあらためて振り返ってみたいと思います。ここでは例として人間が水を飲む動作と植物が水を飲む(吸う?)動作を比較してみます。
それぞれの動きに色を付けていますが、青色は自らのエネルギーを使って能動的に行う動作、黄色は自然物理現象に任せた受動的な動作になります。
まず、私たち人間(動物)が水を飲む場合ですが・・

こうしてみると人間が水を飲むための動作の殆どは、自らがエネルギーを消費して筋肉を動かして行うものとなっています。
次に、植物が水を吸う(吸収)する場合を比較してみます。植物と、人間(動物)との違い!を、ぜひご覧ください!!

植物については「気孔を開く」以外は全て自然任せの動きで水を吸収していることが分かります。
すなわち植物については、周囲の環境条件次第では水が全く吸収できない事態にもなるわけです。これを逆手にとって水がたくさん吸収できる環境条件を作ってあげれば、植物は潤沢に水(だけでなく肥料でさえも!)を吸収できるように仕向けることができますね。
光合成、蒸散、転流、呼吸といった植物の生長にとって重要な働きの殆どは自然物理現象に任せています。こうした自然物理現象は、『温度』や『湿度』、『光エネルギー』、『大気』といった周囲の環境要因を我々が調整することによってある程度意図的に操作することができるのです。
つまり栽培する植物が大いに生長してたくさんの実をつけ、そして病気になりにくい健康的な状態に導くことも、我々がある程度は操作できるのです。これこそがまさに「環境制御をするメリット」なのです。
次回のコラムから、それぞれの環境要因は植物にどんな影響を与えるのかを中心に、ご紹介していきたいと思います。
また、どうぞよろしくお願いいたします。
(IoP農業研究会 情報発信担当)
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