活用事例

Vol.33

「見える化」から「使える化」へと進むデータ活用で、 普及指導の現場に寄り添う

高知県農業技術センター
作物園芸課 先端生産システム担当

篠田 翔真さん

研究員

研究者

2025年9月から運用が始まっている農技クラウドとは何ですか?

高度な解析データを、簡単に指導に使えることを実現するためのクラウドです。

農技クラウドは、普及指導員や営農指導員ら指導者が、生産者を指導する際に、より高度なデータ解析ができるように、SAWACHIのデータベースを複製して、農業技術センター(農技センター)研究員が開発・運営する営農支援システムです。
SAWACHIには多くのデータが蓄積されていますが、必要なデータを個別に落として加工する手間が大きいという課題がありました。そこで、指導目的に合わせてSAWACHIから必要なデータを取り込める画面を私たち研究員が開発し、「指導の場でもそのまま使える画面」として提供するために農技クラウドを立ち上げました。
いまは温度、湿度などの環境データの実測値と目標値を比較する「施設園芸営農支援シート」や光合成量の変化を予測する「光合成シミュレーション」、特定の生産者のデータをまとめて確認できる「重点指導農家設定」など、26の画面を提供しています。これらの画面は、指導者や生産者からの要望に応える形で開発を進めました。
例えば、光合成シミュレーションは環境を変えた時の光合成量を再現します。IoPの取り組みの中で、すでに環境データから光合成量を推定する技術を確立していました。しかし、指導者や生産者にとっては、光合成量がわかってもどう使えばいいのかわからない。そんな声を受け、実際に生産者のハウスの環境を変更した場合に、光合成量がどうなるかをシミュレートできる機能を開発しました。いわば、「見える化」から「使える化」にアプローチした取り組みです。 
生産者に対しては、現在は一部に公開し、テストしていただきながら、機能や画面使用について改善点等のヒアリングを行っています。


開発・運用に至った経緯と、現在どのように利用されているのか教えてください。

現場の要望から生まれ、今は26機能が指導の効率化に役立っています。

農技クラウドの構想は3年ほど前に立ち上がりましたが、そこには2つの理由があります。
1つは、SAWACHIが始まってデータ解析やデータ駆動型農業を進めていく上で、普及指導員や営農指導員らの指導者が生産者を指導するために、もう少し高度なことをやりたいという要望が生まれていたのです。実はSAWACHIの画面上では、作物や地域の違いなどによってはできないことがありました。このため、指導者は必要なデータを個別に落として分析シートを作らなければならず、多くの時間を割かなければいけません。この負担を軽減するためのシステムを構築しようと考えました。
もう1つの理由は、新規技術の提供スピードの向上です。運用に他の企業が入っていることにより、新技術の実装に時間がかかる場合があります。新しい技術を実証段階から早く現場に提供することが可能になるというのも、農技クラウド構築が進められた理由です。
指導者からは、農技クラウドを営農指導に活用して、実際に収量が上がった生産者がいるとか、課題が見えるようになったというような話を聞いています。積極的に利用してもらえているようで、指導者がデータ解析などに割く時間の削減につながっていると感じています。


今後、取り組みたいことは何ですか?

生産者自身も使うことができるクラウドを目指します。

農技クラウドはこれまで指導者に限定して公開していましたが、令和8年度内には生産者にも公開することを目標にしています。生産者自身も、指導されるときに見せられる画面と自分がSAWACHIで見る画面が違っていたら使いづらくなると思うので、指導者も生産者もいっしょに使えるようにしていく予定です。そのためにも、今後は使いやすい画面づくりにも一層力を入れたいと考えています。特に、環境測定器を初めて導入するような新規就農者でも理解しやすい表示が必要だと考えています。
また、自分が今後取り組んでいきたいのは、農業法人向けに経営データを統合した画面の開発です。例えば、重油使用量を環境データから推定してコストに換算する、収量を“量”ではなく“売上”で評価する、肥料代・農薬代などの経費も含めて経営全体を見える化する、といったシステムの画面開発をやりたいと思っています。
私自身、普及指導員として現場にいた経験があり、現在も栽培を行っています。だからこそ、現場で本当に必要とされる機能を理解し、形にできると感じています。これからも、「見える化」から「使える化」へ。現場の声を反映しながら、農技クラウドをより良いものにしていきたいと思います。