活用事例

Vol.30

農業高校の教育に、IoPを活かす

高知県立幡多農業高等学校 教諭

安部誠一郎さん

研究者

IoP共創センターで何を学びましたか?

データサイエンスに必要なデータ解析やプログラミング技術を教わりました。

教員としての資質や指導力の向上を図ることを目的にした「高知県産業教育内地留学者制度」に応募し、2022年4月から1年間、高知大学のIoP共創センターで研修を受けてきました。
センターで学んだことは大きく3つ。ひとつはデータ解析と、解析に必要なプログラミングの技術や知識を教わりました。実際に、幡多農業高校のトマトのハウス内の環境データと生育データを使い、どのような関係性があるのかを分析しました。2つ目は、ハードウェアの技術の習得に取り組み、ハウス内のCO2や日照、温度湿度などを測る環境モニタリングセンサーを作りました。3つ目が、IoPクラウドSAWACHIのデータを使った、高校生のための「IoPデジタル教材」の開発です。
私は農業に関しては勉強してきましたが、データ解析やプログラミングは未経験の分野。それだけに苦労もしましたが、研修を通して今後の農業の可能性を強く感じました。


IoPデジタル教材とは何ですか?

IoPクラウドとつながり、データサイエンスを学ぶ教材です。

IoPクラウドSAWACHIに集まるデータは営農支援に活用されますが、教員の自分から見ると、教材として使えると感じ、IoPデジタル教材の開発に取り組みました。IoPクラウド内のデータを、生徒たちがデータサイエンスを学ぶために活用しようというわけです。さらにご協力いただける篤農家とつないで、高校の圃場のデータを送り、専門的なアドバイスなどをいただけるような仕組みも盛り込んでいます。県内に2校ある農業高校とも結び、高校生同士で切磋琢磨できるような環境を構築しました。さらに、チャット機能やカレンダー機能なども搭載しています。
ICT化は教育現場でも進んでいて、幡多農業高校でも生徒1人ひとりにノートパソコンを渡しています。今後は、ICTに特化した授業内容にしていく必要があるので、今回のIoPデジタル教材も活用できるのではないでしょうか。高校に戻ったら、生徒と一緒にさらに教材の改良を進める予定です。


研修で感じたIoPのイメージは?

高知県の農業のための、産学官の本気度が伝わりました。

実はIoP共創センターに来るまで、IoPがどういうものなのかきちんとわかっていませんでした。センターに来て感じたのは、とにかく産学官のそれぞれが、すごく高い目標を持って、本当に高知県の農業を良くしようと取り組んでいることに非常に感銘を受けました。ぜひこれからも施設園芸の先進県として、IoPによって更なる発展を続けてもらいたいし、私はそれを生徒に伝えていくのが役目だと感じています。
これからはAIを活用するような新しい農業が当たり前になると思います。センターではデータサイエンス、データ農業を学び、新しい農業を指導していく知識やスキルを得ることができたと思います。しかし、科学技術の進歩のスピードは速い。日々研鑽し、学び続ける意識を教員が持つことの大切さを実感したことが、今回での研修で一番大きな学びです。


IoPの教育への活用で、生徒は変わりますか?

就農の有無にかかわらず、社会に出た時の糧が身に付きます。

IoPを教育に活かすことで、生徒たちが高知の農業に可能性を感じるのは間違いありません。では、高校に戻ってどのように教育に活かしていくか。いま考えているのが、チームを組んで課題解決に取り組む「課題研究」という授業で、解決方法のひとつとしてデータサイエンスやデータ解析を教えていってはどうかと思っています。しかし、そのためにはプログラミングに必要な知識なども必要だし、農業で起きている事象をサイエンスの観点で考えるための学びも必要。そういう知識をつけたうえで、IoPデジタル教材が成り立つ部分があると思うので、教科横断的に生徒を育てる主軸ができたらいいなと思います。
農業高校の生徒すべてが農業関係に進むわけではありません。それでもデータサイエンスや農業を学んだことで身に付く知識は、社会人になったとき、決して無駄にはならないと確信しています。