活用事例

Vol.29

工学の知見で農業の課題を解決に導く

高知工科大学 IoP推進センター

福本昌弘さん

高知工科大学 情報学群 教授

研究者

高知工科大学はIoPプロジェクトにどのように参画していますか?

得意分野を活かした研究で、IoPに貢献を

高知工科大学では2018年、IoPプロジェクトのスタートに合わせてIoP推進センターを立ち上げ、プロジェクトの研究推進や人材育成を進めてきました。2022年12月には研究成果報告会を開催しました。
紹介した8つの研究は、情報通信ネットワークやロボット、AI、バイオマスなど、ジャンルが多岐に渡っています。高知工科大学では、「研究者個々の得意分野を活かしてIoPに参画を」と募ったので、栽培に直接関する研究もあれば、ハウス経営、省力化、自動化などにつながる研究もあります。IoPが始まる以前から農業技術センターと連携する話があり、それがベースになりました。またIoP開始の前から、農家の要望を受けて先行していた研究もあります。


高知工科大学がIoPプロジェクトに参画する意義は?

地域の課題を解決し、大学の使命を果たします

工学を研究するわれわれは、農業に関しては門外漢です。しかし素人だからこその発想で、農業が抱える課題に対して「こうすればいいのでは」と提案ができる立場にあります。これまでの農業の延長線上ではなく、工学の知見をもって解決法を提示できます。農家の皆さんが新しい技術に対して、「面白いから、どんどんやって」と積極的な姿勢で受け入れてくださる点も、研究の後押しになっています。
本学には高知県の大学として、地域の課題を解決するという使命があります。IoPプロジェクトでは高知大学などと農工連携することで、高知県の課題に取り組むことができました。IoPプロジェクトの素晴らしいところは、研究者は高知県内だけでなく、世界中どこからでも参加できることです。さまざまな農業データが集まったIoPクラウドを使うことができ、研究者にとって非常に魅力的です。


研究の進捗状況を教えてください。

新しい技術を取り入れながら、早めに進む10年計画

IoPは日本の農業をがらりと変えるものです。高知県の農業は、少し改善するだけでは100年もたないといわれています。IoPプロジェクトは10年計画。今回の報告会は中間発表という位置づけで、われわれの研究のほとんどが10年先に世の中で役に立つことを想定しています。実際には当初立てた10年計画よりも早めに進んでいて、さらに研究項目も増えています。研究を進めるにつれて農業の現実や課題が明確になったことと、科学の進歩によって新しい技術や概念が生まれたからです。こうしたものを取り入れながら、研究を進めてきました。


今後、どのようなことに取り組みますか?

社会実装に向けて、連携を模索します

企業などと連携し、社会実装を目指さなければなりません。圃場に直接導入するというよりも、例えば工業界と組んで、研究によって生まれた特許や技術を使って製品化し、間接的に農業に貢献する形でもいい。今回の報告会はまさに、シーズとしてこのような基礎研究ができているので、世の中にどのように出していくか、私たちと一緒に考えませんか、と呼びかける会でもありました。
われわれ研究者はもともと論文を書いて研究成果を出して終わりなので、社会に根付かせる方法については未知の部分も多々あります。また、ロボットのように製品化すればいい研究もあれば、AIのように広く普及させるためには規格統一まで考えなければいけない分野もあります。われわれ単独でできる話ではないので、県や関係機関に協力をいただきながら、それぞれの研究分野に合わせた社会実装のさせ方を探っていかなければなりません。