活用事例

Vol.12

「IoP生産作物」のマーケティング戦略の武器となる高付加価値化

IoPプロジェクト研究推進部会

渡邊浩幸さん

高付加価値化プロジェクトチームリーダー 高知県立大学健康栄養学部教授

研究者

どのような研究を行っていますか?

農家の要望に応え、機能性研究に着手

高付加価値化プロジェクトで私が最初に取り組んだのは、それまで手を付けられていなかった野菜の品質管理です。まず、気候の変化によって変わる野菜の品質を調べてデータ化することに着手しました。ニラ、ピーマン、ナスを対象に、非破壊の簡易分析法も開発。2週間に1回、協力していただく農家に足を運んでサンプリングをし、2年間分の分析データを蓄積しました。さらに気象庁の気象データからわかる気温や日照状態もリンクさせ、栄養素やうまみ成分、機能性成分が季節によってどう変わるかを把握することができました。IoPで将来的に取り込むより細かな気象データに置き換えることで、将来も品質管理に役立つ分析データができたのではないかと考えています。
次に取り組んだ野菜の機能性研究は、農家からの要望に応えたものです。もともと、野菜の機能性については研究しつくされているといわれているので、ダメ元で22種類の野菜を本学の学生たちと調べました。すると、ニラ、ナス、ピーマン、シシトウから新たな機能性が見つかったのです。これら機能性に関する理論を確立することができ、現在、特許申請の準備中で、最終的には論文にまとめる予定です。


特許申請はどのような意味を持つのですか?

「IoP生産作物」がより多く売れるというメリットが生まれる

今回、特許を申請するのは4つの機能性で、それぞれ高知特産の野菜が持っていることがわかっています。
特許取得のメリットは、機能を持っていることが注目され、興味を持って食べられるようになると期待できる点です。論文発表でも同様のことが期待でき、「IoP生産作物」のマーケティングに資することになると考えます。もうひとつは、加工業者がこれらの機能性に注目し、加工用として高知県産の野菜購入につながるのではないかということ。その場合は例えば、特許料を免除するなどの措置を行えば、県産野菜に優位性も生まれます。


そのほかに取り組んでいることは何ですか?

栄養機能食品への規格化で、IoP野菜の価値を高める

栄養機能食品への規格化に取り組んでいて、すでにニラは研究を終えました。栄養機能食品として認められると、特定の栄養成分補給のために利用できる食品と謳うことができます。例えば、ニラにはβカロテンとビタミンK、葉酸が多く含まれています。そこで、日本一の生産量を誇る高知県産のニラを栄養機能食品として商品化できるよう規格化し、県に提案しています。
同様に、今後はβカロテンの豊富なシシトウや、ビタミンCたっぷりのピーマンについても提案したいと考えています。このようにラインナップをそろえることで、高知の野菜は栄養機能食品が多い、というイメージを消費者に持ってもらい、市場における優位性につなげます。


今後の研究について教えてください

野菜にストーリーを持たせることで、市場が広がる可能性が

今年のテーマとして、居酒屋メニューになることの多いシシトウを、家庭でも普通に食べてもらえるように機能性などをアピールしていきたいと思っています。また、私個人としては、辛みがなくて調理しやすい甘トウガラシも研究対象になるのではないかと注目しています。
先日、ある食品メーカーの方から聞いたのですが、これからは単なる機能性だけではなく、「ストーリー(物語性)」を持った素材でなければ売れないとのこと。高知には環境保全型農業で育てられた「エコ野菜」や、昆虫を利用した「天敵農法」など、消費者に注目されるストーリーを有する野菜がまだまだあります。ストーリーという付加価値を活用したマーケティングによって、「IoP生産作物」の新たな市場が生まれるのではないでしょうか。