活用事例

Vol.18

農家さんの課題解決を施設園芸機器の開発を通して行っているBISHINKEN株式会社様。ハウス管理の労力の低減に向けたシステムの開発に取り組まれています。位置情報などを用いたシステムについて、開発の経緯やこだわりを伺いました。

農家さんの仕事を守るスマートシステム

BISHINKEN株式会社 代表取締役

本郷真志さん

企業

IoPプロジェクトに参加したきっかけを教えてください

デジタル農業の時代に「圃場を守る機能」の必要性を強く感じたからです

当社ではこれまでに、省エネ暖房や炭酸ガス発生装置などの施設園芸関連機器を開発し、農家さんの抱える課題解決に向けた取り組みを重ねてきました。しかし近年、このような環境制御技術の高度化や経営規模の拡大により、園主自らがハウス内の細部までを把握することが困難になってきています。例として「病害虫の発見の遅れ」につながる可能性も十分に考えられ、防除のための労力やコストの増加、被害による収量低下、被害の蔓延を引き起こす原因にもなります。そこで、今後の農業には「圃場を守る」という機能やサービスが必要になると感じ、プロジェクトに参加させていただきました。


IoPプロジェクトで取り組んでいることを教えてください

高精度位置情報を用いた次世代防除支援システムの開発を行っています

病害虫は、発見が遅れれば遅れるほど被害が拡大していきます。そこで当社では、高精度位置情報を活用した病害虫の早期発見・早期対応ができるシステムの開発に向けて取り組んでおります。システムを導入するうえで特別な機器を準備する必要はなく、スマートフォンとインターネットに繋がる環境があればどこからでも利用できます。

・圃場側...病気や異常を見つけて報告する
収穫や手入れで圃場を巡回する従業員さんが、仕事の中で病害虫被害や、それに近い症状や異常を見つけた場合に、現場の写真や発見位置情報等をスマートフォンから送信していただきます。

・管理者側..報告内容を確認する
各圃場から送信されたデータは、PC上の管理画面でほぼリアルタイムに確認でき、①いつ・どの場所で・どんな症状が発生しているのか、②各ハウスの症状別の報告件数の増減推移、③各ハウスの症状別発生比率、等の情報を一目で把握できるので、そこから防除等の対策を計画できます。

★農家さんのメリット
・病害虫情報をシステムで共有・管理することにより、コミュニケーション上の問題で抜け漏れが生じるのを防ぐことができます。
・位置情報付きの症状報告のため、防除対処を必要最小限の労力とコストに抑えられます。
・データの蓄積により自身の圃場の癖をデータで把握できるため、予防的なアクションにつなげることもできます。


位置情報の取得はどのような仕組みになっているのでしょうか?

QRコードと衛星による取得方式を試験しています

現在は、ハウス全体をメッシュ状に細分化してQRコードを割り当て、症状の発生箇所をメッシュ単位で把握する方式を中心に実証試験をしています。
また、RTK(Real Time Kinematic:リアルタイムキネマティック)という技術を用いて、衛星からセンチメートル級の高精度な位置情報を取得する方式のテストも並行しておこなっています。これは大規模な露地栽培における重機の自動制御などの領域で既に実用化されていますが、現状では専用のレシーバー等が必要なため、コストと携行性の課題を抱えています。今後、技術の進歩によっては小型化と低コスト化がはかられれば非常にパワフルなツールになる可能性を秘めていると考えています。


現在の開発状況や、期待していることなどを教えてください

2023年の商品化に向けてテストを重ねています!

現在、農家さんの協力のもと県内の1圃場で基礎的な試験を行っていますが、次作からは試験圃場数を増やして課題の洗い出しとブラシュアップを加速しつつ、2023年度からの本格リリースを目指しています。
今後は、高知県のIoPクラウドや外部の画像診断サービス等と連携することにより、農家さんにとってさらに魅力的なシステムにしていきたいと考えています。


編集後記:高知県 農業イノベーション推進課 IoP推進室

今回は、BISHINKEN株式会社様の機器等高度化支援事業*でのお取り組みを取材させていただきました。これまでに、暖房や炭酸ガス発生装置などで、高知県が全国に誇る高い生産性をメーカーの立場から一緒に形作ってくださったBISHINKEN様。そのご経験から今度は、圃場主と従業員の方々が連携して、「病害虫の早期発見と早期対応」に取り組むことができる次世代防除支援システムを開発されています。病害虫への対応はIoPプロジェクトでも非常に現場ニーズの高いテーマであるため、今後、IoPクラウドとしっかりと連携させていただければと考えております。

*高知県施設園芸関連機器等高度化緊急支援事業新型コロナウイルス感染症により、県の施設園芸が大きな影響を受けている状況を鑑み、施設園芸関連機器等の高度化を促進し、県の施設園芸の更なる発展につなげる取組に必要となる経費の一部支援を目的とする事業。
https://www.pref.kochi.lg.jp/soshiki/160601/2021041200264.html