活用事例

Vol.04

高知県では、データを活用した施設園芸の取り組みが以前から行われていました。IoPプロジェクトに先行して環境データや出荷データを積極的に集約・分析し、農家さんの近くで着実なアドバイスを行ってきた土佐くろしお農業協同組合さま。データ活用に必要なソフトやハードの整備、農家さんのモチベーションアップにつながる農業の通信簿「あゆみ」について伺いました。

農協と圃場 お互いを次なる革新へ

土佐くろしお農業協同組合

山下裕司さん 土居英雅さん 梅原健司さん

写真左から
山下裕司さん(営農部 営農指導課 課長代理)
土居英雅さん(営農部 営農指導課)
梅原健司さん(営農部 営農指導課 係長)

企業

IoPプロジェクトに向けてどのような取り組みをしていますか?

次世代農業に向けて、農協と圃場、それぞれが準備不足だった部分を補強しています。

日頃から多くの農家さんに出荷いただいている農協は、すでに様々な出荷データと環境データを見ることができる立場にあります。そのため、私たち土佐くろしお農業協同組合ではIoPの普及に向けて、環境データの回収やグラフ作成・分析を率先して行っておりましたが、膨大なデータの処理に農協側のソフトが対応できていないこと、また、圃場ごとの環境測定装置が異なることで、データの統合や集計に時間がかかるなど、ハード面の問題をいくつか抱えていることが分かりました。そこで現在、様々なメーカーの協力のもと、圃場・農協それぞれで妨げとなっている部分を解決し、全体的なレスポンス向上を目指した3つの取り組みを実施しています。

1.農協側が導入していた分析ツールの一新。
2.複数メーカーと協力した統合環境制御装置等の制御盤、および環境測定機器の開発。
3.農家さんの通信簿「あゆみ」の配信。


農協側ではどのような仕組みを取り入れましたか?

BIツールを用いた新たな分析ツールを導入しました。

これまで農協が行っていた環境データの集計、およびグラフ作成においては、アナログな作業も多く、また、膨大なデータを処理する際にはソフト対応しきれず作業時間が長引いていました。今後のことを考えるとこの部分の改善は急務であると感じ、様々なメーカーと新たな分析ツール開発に向けた打ち合わせを行いました。その後、デジタルハリウッド大学の太場教授からの助言もあって、ネポン株式会社との共同開発が実現しました。分析結果などは農家さんに見やすいことを最優先にした生産者用テンプレートと営農指導員が確認するために詳細データのテンプレートを作成、「BIツールを用いた簡単に集計やグラフ作成を行える分析ツール」が完成し、見やすい画面やレイアウトに変更することで、作業の簡略化に繋がりました。

※ BIツール
データ整形、クロス集計などの操作をより効率的に行い、判断へ至る分析および資料作成の労力を大きく低減するアプリケーションソフトウェア。


新たに開発した制御盤、測定機器の特徴は?

農家さん視点に特化した機能性を持ち、SAWACHIへの接続も可能。

制御盤に関しては、分析ツールでも協力いただいたネポン株式会社と共同開発。環境測定機器に関しては、BIHINKEN株式会社、株式会社ニッポーと共同開発を行いました。実際に農家さんと対面でお話した際にいただいた意見などを開発にフィードバックしており、農家さん視点の「使いやすさ」や「見やすさ」を重視しました。積算温度と飽差、炭酸ガスや日射量などが、ハウスを離れている夜間にも確認できる仕組みなども好評で、現在は、土佐くろしお管内のシシトウ農家さんや、ミョウガ農家さんに導入していただいております。


農家さんの通信簿「あゆみ」とは?

農家さんの“知りたい”が分かる農業の通信簿です。

前述した分析ツールの一新により、農家さんの環境データの集約が容易になりました。そこで、私たち土佐くろしお農業協同組合では、分析結果や営農指導員からのアドバイスをまとめた「あゆみ」を作成しました。農家さんに分析結果の数字だけを並べ指導するのではなく、もっと私たちから歩み寄った「心配り」のある内容物を作成・配信していくことで、農家さんの理解が高まること、ならびに私たち営農指導員のオペレーション向上にも良い効果をもたらしてくれると思っています。


編集後記:高知県 農業イノベーション推進課 IoP推進室

全国でもトップレベルの指導力を誇り、施設園芸農業の最先端を走っておられる土佐くろしお農業協同組合さま。今後もしっかりと連携させていただきながらIoPプロジェクトを進めることで高知県農業全体のレベルアップを図り、また、それに伴い県下全域でデータを集約し活用していくことで高知県農業の更なる高度化を進めてまいります。