活用事例

Vol.03

IoPクラウドを有効に活用して施設園芸農業の発展を実現するのは、現場で働く農家の皆さんです。IoPクラウドの普及促進のためにも、環境データ等のデータを活用する利点について、農家さんに分かりやすく伝えることが今後重要になります。栽培指導、実証等を推進する現場での成果や農家さんの声を高知農業改良普及所に伺いました。

農家さんの“相談相手”だからできること

高知農業改良普及所

戸梶加奈子さん 篠田翔真さん 高石紗希さん

写真左から
高石紗希さん(技師)
篠田翔真さん(技師)
戸梶加奈子さん(普及指導員)

農家

IoPプロジェクトに参加されたきっかけは何でしょうか?

県内農業の未来を豊かにする一つのツールができると感じました。

高知農業改良普及所では、新しく農業を始める・始めた新規就農者の皆さんに、技術から経営までの指導を行い、地域の未来を担う農業者となれるよう支援しています。実は当施設でも以前から、収集したハウスの環境データを比較し、部会の平均単収増加を目指すなど、環境制御技術の普及に向けた取り組みを続けてきました。その実証結果を踏まえ、今回の高知県IoPプロジェクトが普及し、多くの農家さんがノウハウを共有できるようになれば、部会の平均単収増加だけでなく、担い手不足などの社会問題の解決にも繋がると感じています。また、私たち普及所としましても、環境データを提供してくださる農家さんに、これからはいろいろな角度からお返しができるようになります。そんな豊かなビジョンを感じ、プロジェクトに参加させていただきました。


IoPプロジェクトで取り組むことは?

農家さんの専門外を担当するパートナーを目指します!

普段からJAと共に農家さんと直接やりとりをすることも多い事から、私たちから農家さんに新しい技術を紹介したり、一緒に技術の改良に取り組んだり、こちらで分析した土のデータなどを共有したりと、農家さんの専門外の部分を補完できる支援や活動を行っていきたいと思っています。調査研究に関することはもちろんですが、環境データの比較結果や、アドバイスを「農家さんに分かりやすく伝える」という部分などでも、これまでの経験を活かせると考えています。また、昨年5月からは、春野町のきゅうり部会さんの協力で、実際の圃場を用いたIoPプロジェクトの実証も行っております。今後は実証結果や、実際のモデルケースをもとに農家さんのSAWACHIへの繋ぎ込みも行っていく予定です。


IoPで農家さんが感じるメリットは?

自分のデータと比較ができること!

IoPの実証にご協力いただいた農家さんからは「自分の環境データだけでなく、他の方の環境データと比較して欲しい」という意見を多くいただきました。
肌感覚で問題点は理解しているのに上手くいかないという方や、収穫量が伸び悩んでいる新規就農者の方などが、自分の圃場のデータと良好な圃場のデータを比較することで、「環境データを見る」という習慣が生まれ、改善に繋がったという事例もありました。
県内で同様の課題を抱えている農家さんは少なくないと思いますし、実際にそういうご相談をいただくこともあります。今後は、そういった方々や、まだデータを見ることに慣れていない方に向けて、分かりやすい情報提供やアドバイスができるよう、JAと協力して取り組んでいきたいと思っています。


IoP実証ではどのような成果がでていますか?

16件の繋ぎ込みに成功。環境測定装置の新規導入も!

春野町のきゅうり部会さんにご協力いただき、約1年間をかけて、実際の圃場における環境データ(一作)を分析し、様々なデータの見える化を行いました。これらのデータを実証農家さんにフィードバックしていったところ、今まで見えていなかった問題点や、改善方法が明らかになり、環境データの見える化の重要性が再認識されました。今回の実証では、16件の農家さんがSAWACHIに繋がり、また、部会さんの方でも部会費で新たに25台の環境測定装置を導入いただいています。


編集後記:高知県 農業イノベーション推進課 IoP推進室

高知農業改良普及所では、IoPクラウドの構築以前から地道に一戸一戸のハウスを回り環境データ等を収集・分析し、有意義なフィードバックを農家さんにお届けする活動を行ってきました。今後も協力・連携しながら管内の農家さんのIoPクラウド利用を促進していくことで、日々の営農や実証からのデータの分析とフィードバックという一番重要な業務に注力してもらえる環境を作っていきたいと思います。