5月27日、令和2年度高知県施設園芸関連機器等高度化緊急支援事業に関する説明会がオンラインで開催され、7社20名以上が参加した。高知県の岡林IoT推進監は挨拶の中で「自治体や農家から、高知県が取り組んでいるIoPプロジェクトに関する問い合わせが増えてきている。IoPクラウドの活用や普及のためにも、もっと簡単に、誰でもクラウドにつながるような仕組みや機器の開発が、農家への普及促進を高めることに繋がる」と、進捗状況と今後の展望を語った。
説明会では、支援事業の採択を受けた企業へ補助事業についての説明、ならびにIoPクラウド構築の施工管理を務めるプロンプト・K株式会社CTO 天辰健一氏による「IoPクラウドを活用した連携技術と開発手法」についての説明が行われ「具体的にどのようなステップを踏めばIoPに接続できるか?」をテーマに、IoPクラウドの仕組みの解説や、リアルタイムでの実践デモ、開発ステップの詳細説明等が行われた。
IoPクラウドを活用した連携技術と開発手法について
プレゼンテーター/プロンプト・K株式会社CTO 天辰健一
令和3年度内に予定されているIoPクラウド・テストベッドへの接続に向け、①「開発の範囲」、②「開発の対象技術」、③「開発のステップ」の3つをテーマとしたプレゼンテーションが行われた。
①開発の範囲 〜IoPクラウドで開発するメリットについて〜
はじめに本事業の開発範囲となる「環境測定装置からアプリケーションをプログラミングするためのインターフェース (以下API)への接続」に対し、天辰氏は「クラウド製品を開発するということは、相互接続を行うこと。相手(接続先)がいないと自社だけで完結するのは難しい」と前提的な意見を述べた上で「IoPクラウド・テストベッドにより、支援体制が確立されることで、これらの問題が緩和され、速やかな開発が可能になる」と語った。
IoPクラウドの開発範囲の図
IoPクラウド・テストベッドの支援体系図
<IoPクラウドで開発するメリット>
- 通信仕様や通信方式等の必要な仕様が全て確定しているので、クラウド側の構築に関連する手間が不要で、高度化に特化した開発が可能。
- IoT向けに標準化されたAPIや関連する資料が提供され、効率的なクラウド対応が可能。
- IoTおよびクラウドの専門技術者や運用サポート担当者による、人的支援を高知県内で受けられる。
②開発の対象技術 〜デバイス APIの概要と通信方式について〜
続いて行われた「デバイスAPIの概要と通信方式について」では、環境測定装置とクラウド側の通信の仕組み「デバイスAPI」には、一般的に言われる「HTTP通信によるAPI」とは異なるIoTに特化した方式(MQTT)を採用しており、安全な双方向のインターネット通信が可能であること、オーソドックスな仕様且つ簡単・簡素な通信方式が採用されているため、開発の敷居が低いことが伝えられた。
また、これらデバイスAPIの利用・連携についても、環境測定装置から発信される温度、相対湿度、CO2濃度等のデータを「型式毎に1回登録するだけ」で事前登録が完了し、各環境測定装置に管理者から発行された接続情報をインストールすることで容易にデータ連携まで可能になるとのことだ。
③開発ステップ オススメする5つのSTEP
IoPクラウドでの開発ステップにおいて、天辰氏は、「IoPクラウドに接続する前に、本質的にAWS IoT Coreを理解するための準備期間を設けること」を提案。5つの段階に分けられた各STEPでは、「技術/運用サポート」との連携を開始するタイミングや、獲得できるノウハウ・技術について解説を行った。
STEP.1 「技術理解」
AWSの無料アカウントを作成し、無料枠を活用してAWS IoT Coreがどのようなものかテスト的に使ってみる。
STEP.2 「プロトタイプ開発」
開発対象機器(プロトタイプ)をAWS IoT Coreに繋ぎ、接続実証を自社及び手元の環境で行う。
STEP.3 「IoPクラウド対応開発」
開発対象機器をIoPクラウドのデバイスAPIのデータ形式に対応させてみる。並行して、IoPクラウドの「技術/運営のサポート」との情報交換や打ち合わせ等を開始する。
STEP.4 「IoPクラウド試験接続」
開発対象機器をデバイスAPIに接続する。STEP2〜3で準備/開発した結果のデバッグと接続試験を行う。IoPクラウドの「技術/運用のサポート」と密接に連携する。
STEP.5 「IoPクラウド連携テスト」
開発対象機器とIoPクラウドの最終接続テストを実施する。開発対象機器及び通信機能に関する異常系/負荷系/長期稼働系のテストを実施し、最終的な品質を確保する。
説明会終盤では、STEP.1におけるAWS IoT Core接続についてのリアルタイム実演も行われ、参加企業からの質疑応答では専門的な見地からの質問も飛びかった。
岡林IoT推進監は「IoPクラウドを核にすることで、まだまだ県内の圃場で自動化・省力化が可能だと感じている。高知の施設園芸の更なる発展を目指して、企業の皆様と協力し、IoPのさらなる周知促進に努めていきたい」と締めくくった。
令和2年度高知県施設園芸関連機器等高度化緊急支援事業の採択企業
会社名など | 事業計画名 |
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株式会社SUN電装 土佐くろしお農業協同組合 | 防犯機能付き環境測定装置「ひろみくん」の開発 |
株式会社ニッポー | 廉価帯換気装置の通信接続改良とIoPクラウドへのデータ連携 |
宮地電機株式会社 株式会社アイゼオーレ | SAWACHIクラウド専用 情報通信BOXの開発 |
株式会社丸昇農材 | IoPクラウド通信用ボードの開発と潅水データのアップロード |
有限会社イチカワ | クラウド対応型、自由度と拡張性を備えた計測ユニットの開発 |
BISHINKEN株式会社 | 高精度位置情報を用いた次世代防除支援システムの開発 |