内閣府 次期科学技術・イノベーション基本計画の共創に向けた全国キャラバン in高知 レポート

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高知大学、高知工科大学、高知県立大学、高知県は2020年11月14日、「内閣府 次期科学技術・イノベーション基本計画の共創に向けた全国キャラバン in高知」を高知市文化プラザかるぽーとで開催した。

国は2016年度、科学技術・イノベーション政策の基本的な枠組みとなる「科学技術・イノベーション基本計画」の第5期基本計画を策定し、目指す将来像である※Society5.0の実現に向けて取り組んでいる。現在は第6期基本計画策定の最終段階。大学や自治体、学協会などの協力のもと、次期基本計画を共創する機会として、9月より全国キャラバンを実施している。

今回の「in高知」はその一環として、シンポジウム方式で開催。新型コロナウイルス感染症の影響を考慮し、会場での聴講者は50名程度に抑えて、オンラインを活用して農家や学生、関係団体、関連企業、一般市民などが聴講できる仕組みで行われた。

高知県の濵田省司知事による挨拶で幕を開けたのち、内閣府総合科学技術・イノベーション会議常勤議員の上山隆大氏が「科学技術・イノベーション基本計画の検討の可能性」と題して講演。「新型コロナウイルスによるパンデミックを目の当たりにし、また世界の政治状況も大きく変わりつつあるなか、次期基本計画は土台から相当考え直す必要がある。科学技術は1人1人のウェルビーイングに直結するようなものでなければならない。徹底したデジタル化、高等教育の改革などが取り組むべき重点課題だ。スマート農業の先端を走っている高知県をモデルケースとし、農業のデジタル化を推進していくことも必要だろう。将来に向けた希望のあふれる基本計画にしたい」と科学技術・イノベーションの重要性について語った。

上山隆大氏

続いて、濵田知事が「高知県産業振興計画について」をテーマに、「高知県では全国に先駆けて、少子高齢化と人口減少が進んでいる。平成10年代には経済規模も縮み、年間商品販売額が10年間で2割減った。何とかしなければと、平成21年度に産業振興計画を策定し、概ね4年ごとに作り替えて経済活性化を進めてきた」とこれまでの歩みを紹介。高知県の将来のために重要なのは「若者の定着・増加を図っていくこと」だと強調。そのためには「雇用のための仕事がなければいけない。産業振興計画のキーワードは地産外商。外に打って出て外貨を稼ぎ、若者を県内にとどめ、県外からの移住者も呼び込み、自然増を図っていくことが大切だ。重点となる産業分野は第一次産業と食品、観光、ものづくり産業。デジタル技術を活用して、新たな産業を生み出していく」と方針を示した。

現在進行中の第4期産業振興計画のなかでも、「デジタル技術と地場産業の融合が重要だ。Next次世代型施設園芸をはじめ、水産業などでも活用し、データ集積を高度化して収益を上げていくシステムを構築したい」と県独自の振興策を披露した。

濵田省司知事

高知県における農業のデジタル化については、IoPプロジェクト事業責任者である受田浩之氏(高知大学理事)が「IoPが導く『Next次世代型施設園芸農業』への進化」と題して詳しく紹介。「高知県は1ha当たりの園芸農業の産出額が全国1位。環境制御型農業としても全国トップの位置を占めている。この次世代型農業を一層飛躍させようとするのが、IoPによるNext次世代型施設園芸農業だ」と方向性を示した。

具体的には「作物の生理生態、農作業、環境情報を“見える化”し、クラウド上にデータとして集積していく。さらにこのデータをもとに、農業生産者に営農指導できるように“使える化”し、生産地全体で共有化しようという考え方だ。産学官連携で進め、農研機構、東京大学大学院情報学環と連携協定も結んだ。最終的には栽培・生産ラインの最適化、出荷時期・量の予測を実装化し、併せてハード技術を創出、集積するオープンイノベーションプラットフォームも作る。核となるIoPクラウドは『SAWACHI』と命名した」と高知発の最先端の取り組みを語った。

休憩をはさんで、上山氏がファシリテーターを務め、濵田知事、農研機構の久間理事長、東京大学情報学環の越塚学環長、高知大学理事でIoPプロジェクト事業責任者の受田理事、尾原農園の尾原代表取締役の5人のパネリストが参加するパネルディスカッションを実施。『IoPから始まる高知版Society5.0の実現』をテーマに活発な意見が交わされた。

受田浩之氏

※Society5.0  サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)

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