パネルディカッション
『IoP(Internet of Plants)からはじまる高知版Society5.0の実現』
■ファシリテーター
内閣府 総合科学技術・イノベーション会議議員 上山隆大
■パネリスト
国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 理事長 久間和生
国立大学法人東京大学 大学院 情報学環長 越塚登
高知県知事 濵田省司
IoPプロジェクト事業責任者(高知大学理事)受田浩之
尾原農園代表取締役 尾原由章
■会場参加者
高知大学長 櫻井克年
高知工科大学長 磯部雅彦
(敬称略)
パネルディスカッションのファシリテーターを務めたのは、内閣府総合科学技術・イノベーション会議議員の上山隆大氏。「それぞれの立場で取り組まれていることを紹介してほしい」と投げかけ、パネルディスカッションはスタートした。
まず、農業・食品産業技術総合研究機構理事長(農研機構)の久間和生氏が「農研機構は農業・食品版のSociety5.0の実現に向けて取り組んでいる。食糧の安定供給と自給率向上、農業・食品産業で日本の経済成長に貢献、農業の生産性向上と地球環境の両立。この3点を目標に掲げている。農林水産省によるスマート農業実証プロジェクトにも取り組んでおり、全国148カ所で実証実験中だ。IoPでは高知県の強みと農研機構のAI技術を融合して、農業・食品版のSociety5.0を推進していきたい」と取り組みを説明した。
続いて、国立大学法人東京大学大学院情報学環長の越塚登氏。「IoPはAIの様々な技術を組み合わせないとできない。我々はデータ駆動型のAIを使ったフレームワークにより、出荷数の予測に取り組んでいる。情報技術を使って地方の課題を解決するのは、我々の大きなミッションだ。日本で科学技術施策がうまくいかないのは、技術があってもプラットフォームがないからではないか。IoPは農業分野でプラットフォーム化に挑戦しているプロジェクトなので、ぜひ成功してほしい」と課題も含めて提言した。
高知県安芸市の尾原農園代表、尾原由章氏は「ピーマンを1万6千株作っており、養液栽培と水耕栽培が半々。IoPによって、土の中のブラックボックス的な要素が数字で理解できるようになり、科学的に栽培できるようになった。デジタル化はもっと進んでほしい。スーパーの売り場で栽培現場が見られる仕組みなどができれば、系統出荷の中でも農家と消費者が一層結びつくことができるのではないか」とスマート農業の未来像を描く。
高知県の濵田省司知事は、IoPを産業振興にどうつなげていくかという上山氏の質問に、「IoPを通じて農業をもっと楽しく、もっと稼げるものにしたい。自宅にいながら様々な遠隔制御ができるといった働き方を提示できれば、農業にチャレンジする若者が増えていくと思う。Society5.0の実現に向けて、プラットフォームが重要だという提言があった。IoPのプロジェクトは1つの解決のモデルを示せるのではないか」と力を込めた。
IoPプロジェクト事業責任者の受田浩之氏(高知大学理事)は「IoPで交付金が支給されるのは5年間。その後、自走してKPI(重要業績評価指標)を達成することが重要だ。そのうえで、世界からベンチマークされるような施設園芸農業の先進地になりたい。篤農家にいかにIoPの技術を使っていただくかなど、課題はいろいろある。研究者がもっと現場に出て、『共創』の意識をシェアすることが大切だ」とIoPの今後について語った。
会場参加者である高知大学の櫻井克年学長、高知工科大学の磯部雅彦学長も意見を求められ、「一番の課題は、研究力を持った人材を育成すること。IoPを担う次世代地域創造センター、企業や官公庁と一緒に考える希望創発センターを駆使して取り組んでいく」(櫻井学長)、「本学は小さな大学で小回りが利き、学問的なバリアが低い。IoPで作業ロボットのAI化を担うほか、防災やバイオマス分野にも展開していく」(磯部学長)と大学の地域貢献について述べた。
その後も白熱した議論が続き、「農産物のビジネスはそれだけでは小さいので、食品産業まで広げるべきだ」「人材育成では垣根を取り払うことが何よりも重要」「産官学の中に生産者もたくさん加えてほしい」「農家が行っているIoPの取り組みを都会にも発信を」「こういった双方向のコミュニケーションの場を増やしてほしい」といった活発な意見が飛び交った。
最後に上山氏が「今回、農業の現場も見させてもらったが、高知の方々の熱意を強く感じた。Society5.0の実証化のモデルとして、今後とも見据えていきたい」と締めくくり、1時間にわたったパネルディスカッションが幕を閉じた。
■ファシリテーター
■パネリスト
■会場参加者