Next次世代型施設園芸農業セミナー2025が開催されました

イベント

2025年11月19日に高知共済会館にて、高知県Next次世代型施設園芸農業セミナー2025が開催されました。会場とオンラインを合わせて109名が参加されました。

○開会挨拶 
 高知県農業振興部 部長 松村 晃充

「高知県では農業のDX化を目指し、平成30年よりIoPプロジェクトに取り組んできました。プロジェクトの核となるデータ連携基盤SAWACHIも本格運用から3年が経過し、現在、1,700戸を超える県内の生産者にご利用いただいております。SAWACHIでは他県の皆様にもご利用いただける仕組みを構築しています。本セミナーではその利用におけるスキームや、高知県のSAWACHI活用事例の紹介、さらに本年度から岐阜県版SAWACHIを活用している岐阜県様の事例も紹介いたします。」

○講演「農業データがつなぐ地域と未来 -自治体と農研機構の共生-」

農研機構農業機械研究部門機械化連携推進部

機械化連携推進室 上級研究員 野田 崇啓

「現在、農機APIを用いた取組は、その多くが環境データの見える化に止まっており、いまだ途上段階にあると考えています。実際に生産者が必要としているのは、収量予測などの未来の意思決定につながるツールです。収量予測ツールは、今後の営農支援システムのキラーコンテンツとなり得る重要技術です。今後はそこを目指して解析や予測といった分野の開拓・競争がどんどん進んでいくと思われます。ですが私たちはこの段階で競争をするのではなく、共通の研究領域を定めて、足並みが揃った上での開発が進むことを期待しています。例えば、生育調査のデータの取得方法を共通化できればデータの比較はより容易になります。様々な栽培体型をデータで表現する方法が確立できれば、より細かな生育予測のシミュレーションが可能になります。農研機構でも昨年度に、物質生産モデルに野菜の収量や生育量を推定する施設園芸データ連携コンソーシアムを設立し、施設園芸のデータ利活用の基盤を整理し、生産管理や営農支援の高度化を加速させる取組を進めています。」

○高知県の取組紹介

「IoPの取組・地域展開のスキームについて」

高知県農業振興部 農業イノベーション推進課 
企画監(IoP推進担当) 齊藤 格久

「IoPプロジェクトでは、生産者の環境データや出荷データ等をクラウド上に集積するとともに、これらのデータを営農指導員、普及指導員、生産者の間で共有可能な仕組みを構築することで、生産者の伴走支援強化に取り組んできました。その結果、SAWACHIを活用する新規就農者は地域平均収量を上回るなどの実績も出ています。導入のプロセスにおいても、データを共通形式で取得可能にすることで、様々な環境測定装置の設置状況にも対応しています。また、SAWACHIの地域展開への取り組みにも力を入れています。高知県がSAWACHIのライセンサーとして運用企業に利使用許諾を行い、SAWACHIの機能をパッケージ化して提供することで、各県が推進する営農支援等に結びつけやすいスキームを構築しています。」

○岐阜県のデータ活用の取組

岐阜県農政部農業経営課園芸技術支援係

技術課長補佐 高橋 幸隆
岐阜県農政部農政課スマート農業推進室 
主任技師  安田 圭佑

・農業の担い手育成の課題解決にデータを活用

「岐阜県では、かねてより農業の担い手育成に向けた取組を推進してきましたが、当県は平野部や山岳部で起伏の多いエリアに位置し、同じ品目でも南北で作型が異なるケースが多いことや、農業技術の伝承の際にベテラン農家さんの感覚的な表現に新規就農者が苦労している場面などが多々見られました。そのため、令和2年よりこのような課題解決に向けて、農業データを活用した取組(国事業を活用した技術実証)を行ってきました。各産地で協議会を設立し、ハウス環境、生育調査、収穫量の3つのデータ分析を行い、データを元にした技術指導や、栽培管理の改善に努めています。」

・岐阜県版SAWACHIの導入と成果

「岐阜県内で農業データ活用の取組が進み、県内におけるデータ活用グループの活性化や、収量増加につながったケースなど、嬉しいデータが得られるようになった一方で、単価低迷や生産コストの増加をどうするかという新たな課題もありました。そこで、産地単位、県全体の戦略的な生産・出荷・販売につなげる農業プラットフォームの構築を目指していたのですが、その実証検証中にSAWACHIの地域展開が開始されました。すでに高知県で良い実績が出ているツールを活用でき、コストも抑えられる。そしてノウハウを持っている高知県の方々とつながれるという点に大きな魅力を感じ、令和6年度から実証環境をSAWACHI(岐阜県版)に移行して検証を行うことにしました。SAWACHIを活用した令和7年度の検証では、冬春トマトの実証者の平均単収が部会平均より20%増加するという成果も出ており、今後、さらなる取組のブラッシュアップを図っていきたいと思っています。」

○高知県のデータ駆動型農業推進の事例発表

  • 事例発表「高知県におけるデータ駆動型農業の推進」

高知県農業イノベーション推進課 専門技術員 山本 正志

「データ駆動型農業の推進において、環境測定装置やSAWACHIのようなツールを導入しても、データを正しく活用できていない場合や、その他の基本管理が適正でない場合は、収量向上にはつながらない事例が多く見られてます。データ駆動型農業とは、生産者自らが取得したデータに基づいて栽培管理や栽培改善をしていくことです。生産者の経験や勘のみに頼った栽培管理からの行動変容が大切となります。」
「現在、高知県ではしっかり稼ごうプロジェクトを推進しています。重点指導農家を選定し、生産者が目標収量の設定、基本管理技術の見直し、栽培改善方策を実践していく取り組みです。指導員は、栽培改善方策にデータに基づく管理を提案するなど、生産者の取り組みを伴走支援し、ともに目標達成を目指します。このため、指導員の技術力、指導力の向上が大きな課題となっています。私は今、生産者に寄り添って、しっかり伴走支援できる人材の育成に力を入れています。」

  • 事例発表「高糖度トマトの収量向上に向けた取組について」

高知県高吾農業改良普及所 普及指導員 森田 菜々

「データ連携や環境測定装置の導入が進んでいながらも、部会内で大きな収量差が生じていた高糖度トマトの産地にて、今回、中間層の底上げを目指した取組を行いました。まず、収量差が生じている原因を探るために、高糖度率と反当収量で生産者をグラフ上に落とし込み、分析したところ、課題の傾向が3つにグループ化できました。各グループに応じた課題解決に向けて、かん水管理の改善に向けた比較やハウス内環境の改善案の提示をしました。また、現地検討会を開催し、かん水管理の改善が必要な重点指導農家に高収量農家のほ場を見てもらい、意見交換ができる場を提供し、生産者に行動変容を促しました。その結果、「他の生産者のデータも見たい!」とデータ共有グループのメンバーが増えるなど、部会内のデータ活用への関心も向上しました。生育診断に基づいたかん水管理も意識されたことで、取組開始から現在にかけて目標収量を達成する生産者が増えました。」

  • 事例発表「ピーマンでのデータ駆動型農業の取組について」

高知県中央東農業振興センター 濵田 奈々子

「病害発生が課題となっていたピーマン産地(58戸)を対象に、データ共有グループを活用した温湿度管理指導を行い、病害予測画面を活用した指導へとつなげる取組を実施しました。当エリアでは機器接続率が低く(17.2%)、今後の取組に向けても環境データへの関心を高めることへの必要性を感じていました。そこで最初にSAWACHIのグループ機能を活用した勉強会を開催。ピーマンの収量や病害抑制にもつながる温湿度管理についてグループ内で情報を共有する機会などを設け、グループ全体の環境データへの関心を高めました。その後、課題となっていた病害(黒枯病)に対しては、SAWACHIに搭載されているハウス内環境データを基にした病害の発生リスクを表示する病害予測画面を活用した指導を展開。こちらは現在のハウスのリスクが顔文字の表情で確認できる点が分かりやすいと好評でした。また本作分で記録したデータはグラフ化して振り返ることも可能で、病害発生の多い圃場と少ない圃場、それぞれの病害リスクの推移や、環境データの比較を行っています。」

発表後の質疑応答の時間では、他県から来られた行政・農業関係者の方々を中心に、今回の発表者や高知県に対し、農業DXに関する質問が多数寄せられました。

最後に、農業イノベーション推進課企画監の齊藤格久より閉会の挨拶がありました。

「今後、SAWACHIを各自治体様で積極的にご活用いただき、こうした取組が全国各地で広がることで、農業DXの次なる飛躍に繋がることを期待しています。そして、本日この場で得られた交流や意見が活かされ、各地での実践と技術革新を推進していくことで園芸農業の未来がさらに広がることを心から願っております。」