【IoP農業研究会】連載コラムNOTE(第10回) 「元素とか原子とか分子とか…」

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 本コラムは、植物生理や栽培環境の基礎について、日々の栽培における気づきや課題解決に繋がるような情報を、定期的に発信しています。お時間あるときにでもお読みください。

元素とか原子とか分子とか、中学高校の化学の授業で習った記憶はかすかにあるが…といった方も多いと思います。私もそのひとりで、「すいへーりーべぼくのふね」とか、原子の周期表の順番を暗記した記憶もかすかにあったりします。あの頃は「こんなの覚えても飯のタネにならんやろ!」って思っていましたが、よくよく考えるとN・P・Kは日々目にしている元素記号だったりするわけで、人生ホントに分からないものです。そこで第10回目は植物の構成に必要な栄養素について考えたいと思います。

植物に必要な栄養素として多量要素とか微量要素という言葉を聞いたことがある方もいらっしゃると思います。養液栽培をしている方なら必須の内容ですね。多量要素には次のものがあげられます。

多量要素の中でもN・P・K(窒素・リン酸・カリ)は特に最も多く必要とする養分で、「肥料三要素」とも呼ばれます。肥料の袋や箱などに10-6-8などとN・P・Kのバランスが表記されているものは良く見られますね。

次に微量要素を紹介しましょう。

土耕栽培をされている方は、微量要素は土壌に存在している元素として普段の施肥で意識することは殆どないと思いますが、葉面散布剤などに含まれる元素はいくつか見られますね。

多量要素に較べてどれくらい微量かというと、例として「高知処方」という養液の処方箋を参考にご紹介すると、硝酸カリウム32kg(32,000g)に対してもっとも多いホウ素が146gで、最少となるモリブデンやニッケルだと0.9gとほんのわずかな量になります。しかしながら必須の要素ですので養液水耕栽培においてはしっかり投入する必要があるのですね。

さて、多量要素と微量要素としてそれぞれを構成する元素をご紹介しましたが、これらは植物体内の組織内濃度でいうと多量要素は3.5%、微量要素に至っては0.03%程度にすぎません。それでは残りの96%余りは何かというと、H(水素)・O(酸素)・C(炭素)となります。

これらの元素、H(水素)が2つとO(酸素)ひとつが結びついて水(H2O)になりますし、O(酸素)元素が2つ結びついてこれも大切な酸素(O2)となります。そしてC(炭素)ひとつとO(酸素)2つが結びつくことで、光合成の材料となる二酸化炭素(CO2)になりますね。

さらには光合成で糖(C6H12O6)が生成されますので、この元素式を見ても、水(H2O)と二酸化炭素(CO2)を材料として光エネルギーでつくられた化合物(二種類以上の元素が結びついてできた物質)であることが良く分かると思います。

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肥料に対しては、とてもこだわりのある生産者はたくさんおられますし、いろいろな効果をうたう肥料もたくさん販売されています。これは「施肥」という作業を生産者が直接的に行うことで、植物の生長への影響が強く実感できるからでしょう。しかしながら化学的な見地から元素レベルに落としてみると、植物体に最も必要とされている栄養素は、水素・酸素・炭素が結びついて植物が自ら作り出す「糖」であることが分かります。

これまで光合成があまり意識されていなかったのは、「どれだけの光合成が行われてどれだけの糖がつくられているのか」が見えなかった、実感できなかったからではないでしょうか。

その代わりに「温度はこれくらいで」「湿度はこれくらいで」「CO2は施用した方が・・」「日射はたくさん取り入れよう」、そうすれば「たくさん光合成するはずだから、たぶん・・」というちょっと実感しにくく、手探り感がぬぐいきれない取り組みがされてきました。

長い間こんな状況でしたが、今ではIoP研究の成果として「温度・湿度・CO2濃度・日射量」が分かれば、高価な専用の機械で測定するのと同等の値の光合成の働きが算出される仕組みが実現できているのです。自分の栽培環境でそのときどきの光合成の働きがSAWACHI画面をみれば数字で分かり実感することができるのです。

上がSAWACHIで提供される光合成情報のイメージです。数値の意味が良く分からなくても、横のアイコンで状態も一目瞭然です。もはや手探り感などはありませんね。こんな環境は、日本のどの産地でも提供されていません、高知スペシャルなのです。SAWACHIを知っている他産地の生産者からは垂涎の的なのです。

是非SAWACHI画面を開いて、みなさんのハウスにある水素や酸素や炭素がどれだけ糖に変化したのかを、日々確認して実感してみてはいかがでしょうか。そこには施肥と同等、またはそれ以上の有益な情報が見えるはずです。

次回に続く
(IoP農業研究会 情報発信担当)

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