第2回 IoP技術者コミュニティ講習会を開催しました

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第2回 IoP技術者コミュニティ講習会を10月21日(金)、高知県農業技術センターに於いて開催しました。

IoP技術者コミュニティは、IoPプロジェクトが進めるIoPクラウドの取り組みを拡げるために、技術習得や製品連携による新たな価値に繋げる活動を行っています。

今回は、IoPクラウドの開発管理を行うプロンプト・Kのエンジニアが講師となり、SAWACHI画像AIセンシング講座として、AIを実際に自分で使って理解を深める画像認識技術を中心にハンズオンで行われました。

講習は、1日をかけてAIへの理解を段々と深めていくプログラム。様々なAIを知る、AIの仕組みを理解する、AIを実際に「作る・使う」の3部構成で進行しました。

【様々なAIを知る・AIの仕組みを理解する】

講座は、様々なAIを実際に試す所から始まりました。画像認識やディープランニングで写真内の人の年齢・性別を推定する顔認識、話している言葉をテキストに変換する音声認識、テキストを音声に変換する音声合成、文章を入力するとその後の文脈を読み取り、AIが文書を書いてくれる自然言語処理のAIを通して、具体的に何ができるかを体験しました。合成音声は、AIアナウンサーとしてラジオ局やテレビ局などで利用されており、性別や年令、喜怒哀楽のトーンなども選定できるAIも登場しているようです。

次に、AIを作る工程や、入力データとモデルを比較して一致している確率を計算する推論の重要性、データを収集し集めたデータを整えて学習させ、モデルの精度を評価し運用環境で推論する開発方法について学びました。

AIの仕組みでは、機械学習における特徴量の重要性についての説明がありました。例えば、私たちは、仲の良い友人が、100メートルぐらい先を歩いている時に、その様子から、服装や歩き方などから友人じゃないかと視覚(五感)が受け取った特徴から判断します。AIは、それらの特徴を全部数値化して捉える必要があり、センサー(カメラなど)が受け取る特徴をもとに数字の組み合わせ(ベクトル)と偏りでデータ分布を行い、様々な群を形成、新しいデータが入った際、特徴量をもとに空間上において群を識別する軸によってイメージを認識しています。
「AIに100%は無く、100%は、問題を丸暗記の状態。正確性が求められる業務、間違うと他の仕事に大きな支障が出るものに、AIをそのまま適用することは、おすすめしません。間違うことを念頭に置いて、人のチェックで確認する仕組みを作って運用する。業務のフローが大切になる」と実際にAIを運用する際のポイントが語られ午前の部は終了しました。

【IoPビニールハウス見学】

午後の部は、高知県農業技術センターでIoPプロジェクトの研究が行われてるビニールハウスの見学からスタート。植物の生理生態を記録している設備や栽培環境について高知県農業技術センターのスタッフから説明を受けました。植物の表面温度を計測するカメラや撮影画像をハウス内のディスプレイで確認できる仕組み、光合成量を計測する装置などを間近に見ることができました。受講生は、設備機器についての質問やハウス内の写真を撮影するなどIoPとAIの活用について理解を深めました。

【AIを実際に「作る・使う」】

AIの活用についての心構えと学習環境について講師から説明がありました。
「まず課題があってAIの活用があるプロジェクトが望ましい。利用するテクノロジーから決めると、課題の軸がブレる。AI学習は、深層学習、機械学習系、時系列分析系、数理最適化の大きく4種類。社会実装する際に、時短レシピ的な発想が大切になるため、コストや難易度によりAPIの利活用やノーコード、ローコードまたは、AutoML(自動マシンラーニング)の自動的に深層学習を行うものなどを検討する。エンジニアのプロでもゼロベースで開発することは、少なくなってきている。」

次いで、講師がAPIを使って作ったアプリを参加者が体験。OCRの機能とAI翻訳と読み上げ(音声ファイル)を組み合わせて作成。LINEアプリのお友達登録を行い、紙の原稿に書かれたテキストをスマホのカメラで読み取った後、ラインの画面上にテキスト化したものが生成、翻訳言語の言語を選択し翻訳後にAIがテキストを読み上げるものでした。

■ハンズオン1

ノーコードでの画像認識のAI開発に挑戦しました。まず、画像認識させるアイテムを3個決定。スマホ、ペットボトル、ペンケースをPCのカメラに向けて動かして約120枚の写真を記録。AIに3個の画像を機械学習させたあとに、スマホなどのアイテムをカメラに向けると3個の中でAIが推論した結果が表示されるものでした。参加者は登録したアイテムや登録していないアイテムをカメラに向けてAIの推論値を比べていました。

■ハンズオン2 

PythonやGoogle Colaboratory、MNIST(0から9までの手書き文字を認識するデータセータセット)や機械学習・深層学習のフレームワークについて学びました。参加者は、プログラムをひとつずつ実行、エラーが出ないことを確認しながら、プログラムで処理されるデータの集合体になるデータセットの準備作業を体験しました。ソースコードを確認しながら、ひとつずつプログラムを実行することで、どのような処理をどんなコードが行うかの理解が深まります。参加者は、作成したデータセットを利用して手書きで書いた文字をAIがどのように認識して推論するかを確かめました。

■ハンズオン3

学習済みモデルや画像データに意味付けを行うアノテーションなどを学びました。「一般的にGoogle、Amazon、Microsoftなどの膨大なデータをもとに画像認識や物体検出などのテーマに対して学習されたモデル。コードから考えるよりも良いモデル開発や、時間短縮に繋がるなどメリットが大きい。AIの開発で一番大切なことは、データセットを作ること。データセットの種類をテーマごとに気を付ける必要があり、作業効率を高めるアノテーションツールの使用を勧めている。」と講師から開発時のポイントが語られたあと、物体検出やセグメントの作業を効率よく行えるツールのひとつMicrosoftが提供しているVoTTを使っての実演が行われました。「物体検出や画像認識、自然言語処理は、膨大なデータで学習すればするほど、モデル自体のデータのサイズがどんどん大きくなる。一般的に、精度を上げるため、モデルを大きくすると予測返答までの処理時間が長くなる。学習済みのモデルの選定時に精度と処理速度を要件に合わせて考える必要がある。」と活用時のポイントについて実演を交えながら説明がありました。

最後に、エンジニアでもある講師からAIのプログラム開発時に有益な情報の提供がありました。データを作成する際に、少ない画像に加工をランダムに加えられる画像データの水増し「データオグメンテーション」や自動機械学習の「AutoML」のサービス内容についてプログラム開発の経験を通じたメリットの説明があり本講座は終了しました。

その後、高知県が取組むIoP研究の紹介がありました。ハウス内に取り付けられたカメラにより、生育状況を確認できることやAIと連動し画像認識を利用して計測。花数、実数を数値データ化しグラフで年間の推移の変動を見ることで収穫時期の予測につなげる取組を進めています。

【お知らせ】

次回のIoP技術者コミュニティの講座は、12月16日(金)開催予定。
IoPクラウドを題材にデジタルツインのモデル構造について学びます。