内閣府 次期科学技術・イノベーション基本計画の共創に向けた全国キャラバン in高知  基調講演

特集

内閣府総合科学技術・イノベーション会議常勤議員 上山隆大氏

基調講演『科学技術・イノベーション基本計画の検討の可能性』

上山氏は冒頭で、「全国キャラバンという名が表しているように、できるだけ多くの方々のご意見を賜って、最終的な素案の中に反映させていきたい」と今回のシンポジウムの意義を説明。まず、日本の科学技術が置かれている現状を示した。

「第6期基本計画の策定に向けて2年ほど前から議論してきたが、新型コロナウイルスのパンデミックが起こり、土台から考え直さないといけないということになった」と舞台裏を明かした。日本も世界も大変な事態になった。だが、考え方を変えれば、科学技術の重要性を再認識できたのではないかとも言う。「今後、様々な形で襲ってくる自然災害、あるいは未知の感染症などを解決できるのは科学技術しかない。人々の間に、そういった思いが広がったのではないか」と分析する。

科学技術に対する関心が高まるなか、第6期基本計画はどういった内容になるのか。「第5期基本計画で掲げられたSociety5.0を実現しなければならない。現状のすべてのシステムを変えるため、文理を超えて議論する方向を模索すべきだ。米中の対立による世界のパワーバランスの変化も注視したうえで、基本計画を作っていく必要があるだろう。10年後、30年後にはどういう国になっているのか、あるいはなるべきなのか。第6期には私たちの未来像も含めて策定するべきだと、議員でほぼ意思統一をしている」と現状を説明した。

描く未来像については「日本では人口減少が続き、都市部と地方との格差も問題になっている。しかし、どこに生まれ育とうとも、人々のウェルビーイングにそのまま直結するような科学技術でなければならない。都市と地方、人口、健康、介護、資源、エネルギー、地政学上の問題。これらすべての領域において、国民1人1人に届くような基本計画を作っていくことが重要だ」と考え方を示した。

科学技術のなかでも、真っ先に取り組むべき課題は「徹底したデジタル化。社会全体と政府のデジタル化を進め、共通のプラットフォームを作っていくことが欠かせない。これこそがSociety5.0の実現に向かう方向性だ。予算はバイオ、AI、マテリアル、宇宙といった分野に限定せざるを得ないだろう。教育の改革も必要となる。国立大学は地方創生のハブ(拠点)となり、初等中等教育では多様な価値観と想像力を持つ人材を育てていくべきだ」

高知県が行うIoPに対しては「スマート農業の最先端を走っており、本格的なモデルケースとなる」と高い評価を下し、「将来の食糧不足を見据えた農業の在り方を、超長期的な形で動かしていきたい」と方向性を明らかにした。

最後に、全国キャラバンについて、「提言されたことを東京に持ち帰り、内閣府の中で熱意を込めて議論していきたい」と力強く締めくくった。